ICHIROYAのブログ

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母の日まであと5日

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アンティークねんねこ(ねんねこ:子供をおぶってはおるお母さんの羽織)


次の日曜日は母の日ですね。
うちの母は昭和6年生まれで、現在81才。
幸い、2才年上の父も健在で、ふたりで暮らしています。

僕は子供のころ、幼稚園で焼けた木炭ストーブのシャベルを手に押しつけられたりして、あまり良い思い出がありません。
とくに中学時代までは、なんだか暗い時代だったようで、積極的に、思い出す機会がありません。
結婚して実家を出たときに、アルバムもおいてきたので、手元には写真もありません。
そうなって、思い出さないと、ますます都合よく忘れてしまって、子供時代の思い出は、ぽっかりとなくしてしまったようなかんじです。

残念なことに、子供のころの記憶が遠くなるのとともに、母の思い出も薄らいでしまっています。

母の誕生は1931年。満州事変の年。
母が14歳、いまでいう中学2年の年に敗戦。
結婚が何年だったか知りませんが、28歳で、僕を出産。

子供のころ、母に聞いたことは覚えています。
「敗戦ってどうやって知ったの? 天皇陛下の玉音放送は聞いたの? 戦争は勝つと思っていたの? 自分は戦争で死ぬと思っていたの?」
「お見合い結婚だったの? なぜ、お父さんと結婚したの?」

たしかに何度も聞いたことは覚えているんですが、母の答えのほうは、覚えていません。
父も母も出身は福知山で、僕は大阪で生まれていますから、結婚してからは大阪で暮らしていたはずですが、大阪に来た経緯も知りません。

もちろん、鮮烈に覚えていることもあります。
小学校低学年のころ、家の前を通る車にひっかけられて、溝に落ち頭を何針か縫う怪我をしました。
頭から大量に出血している僕を見て驚いた母が、僕を背負って病院に連れて行ってくれました。
そのとき、救急車に乗ったかどうかは思い出せないのですが、病院からの帰り、安心しきって、母の背中に頬を乗せていたことを思い出します。

弱虫の僕に比べ、気が強い妹は、ある時、玄関に閉じ込められて腹をたて、玄関のガラスを叩き割って血の流れる拳をみて平然としていました。
その事件のあと、父と母が、僕の前で、話していました。
たぶん、父が言って、母が同意していたんだと思いますが
「性格、反対やったら良かったのになあ」と。

とにかく、母は心配性で、僕が会社を辞めたときも、誰よりも心配してくれました。
母のなかでは、僕はいつも「あかんたれ」で、到底、自営業を成り立たせるような強さが、僕にない、と思っていたようです。
この仕事をしてもう10年になりますが、電話で話をするたびに、家に行くたびに、「どうや商売は?」となり、たとえば体調が悪いときに電話をすると、いくら商売は順調、と言っても、あとで、妹に、「えらい、声が暗かったわ。商売しんどいんちゃうかなあ。大丈夫かなあ」と話していたりします。
「おかあちゃんは、世界中で、いちばん、俺を過小評価してるわ」と、度を過ぎると僕も腹をたてるのですが、母の僕の評価は、すでにごちごちに固まっており、変えることはできそうにありません。

いつの頃からか、母は着物の仕立を始め、家には長い仕立の机があって、母はいつも正座して縫いものをしていました。
いつも縫いものをして、給料の多くない父を支え、いつも僕と妹のことを考え、いつも心配でいっぱいになっていました。
そして、いまも、僕のことを、世界で一番心配してくれています。

そういえば、中学生のころ、ボーリングブームになり、母がご近所の方とボーリングに行って、楽しかった、また行きたい、と話してくれていたことがありました。
母に頼りきっていた、弱虫で、狭量な僕は、僕が受験勉強しているときに、ボーリングなんかして、と妬ましい気持ち、母に裏切られた気持ちがしたのです。
母は、そんな僕を見て、
「受験でたいへんやのに、ボーリングなんて、私がしてたらあかんな」と言い、その後、母がボーリングに行くことはありませんでした。

おかんよ、悪かった。
母の日に、いっしょに、ボーリング行こか?
去年足の骨を折って、歩くのがやっとやから、もう、ボーリングは無理やな(笑)。
でも、頭がまだしっかりしてるうちに、古いアルバムでも引っ張りだして、昔の話しような。
俺が生まれるまえの、アルバムも見せてくれよ。
おかんがまだ若いひとりの女だったときの写真。
まだ、僕や妹が、おかんの人生の真ん中に居座るまえの写真をね。

母の日まで、あと5日。