ICHIROYAのブログ

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銀行は貸してくれず、キャッシュも尽きるXデーを想像してみる(本の紹介)

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 小説のプロットづくりのために中小企業の再生や会社法について、いくつかの本を読んでいるのだが、川野雅之氏の『中小企業再生の新しい道標』という本がとても面白かった。
 僕の会社は、リサイクル商品のため現金商売であり、また大きな設備投資の不要なECであるため、リーマンショック後に大きな売上減があり、事業を失うかもという恐怖を感じて事業構造を変えたことはあっても、債務の返済に困ったという経験がない。
 だから、銀行からの融資とか、リスケとか、という経験がなく、企業再生の現場というものが、どうしてもリアルに想像できなかった。

 この本のテーマは、いままでの企業再生が銀行の自己資本の毀損をいかに少なくするかという視点で行われていたのに対し、これからは「納税を増やす」「雇用を増やす」ということに主眼がおかれた再生方法になるということなのだが、企業再生のリアルな現場やノウハウも描かれている。
 たとえば、民事再生法の申し立て当日の挨拶回りは車ですべきか、電車にすべきかとか、バンクミーティング(取引銀行に債務カットなどを依頼するためのミーティング)では会議机の設置をどういう形にすべきかとか、債権者会議で配るべき書類の書式や会議に警備員を配置すべきかとか、とても細かい点までリアルに記述されていて、読んでいる途中から、まるで自分の会社がそうなって、民事再生手続きの手順を勉強しているような気分になった。

 おそらく、僕と同じく、たまたま現在、上向きの波にいて、それなりに順調に回っている会社の経営者は、その時が訪れることなどはまったく想像していないだろうし、あるいは、ちょうど人間の「死」がどういうことなのか想像するのと同じように、ただただ怖くて破滅的なものとしか思っていないだろう。
 だが、「人間の死」は、本人にとって結局はわからないものであるが、「キャッシュがなくなり銀行も誰もあらたな資金を貸してくれないというXデー」がもし来たとしたら、その時、なにが起きて、なにをすべきかということは、だいたいわかっているのである。
 そのXデーは「人間の死」とは違い、その気になれば、ある程度リアルに想像することができる。
 想像することができれば、恐怖感はかなり減じる。
 この本の理解はまだまだ足りないとは思うが(もう一回読む)、それにしても、Xデーへの恐怖感がかなり軽くなったことは事実である。
 また、この本では、確実にXデーが近づいてきている状況にあっても、なぜ多くの経営者というものはそれを甘受してしまうのか、ということを知ることもできる。僕を含め、たまたま順調な波にいる時には、そういうマインドは不思議な感じこそすれ、理解はしがたいものがあるので、とても参考になるのである。
 この本に限らないとは思うが、いまは経営が順調な方も、一度、類書を読んでXデーをどういう心理で招き寄せてしまうのか、また、Xデーにはなにが起きるかをリアルに想像してみることをおすすめしたい。

 ちなみに、この本の本筋のエッセンスの詰まっている文章をいくつか紹介したい。

 

 事業再生は、"土俵"に上がった1社だけをフォーカスして、短期的な”卒業"を目論みます。そして、これに大きな影響を受ける他の企業は見て見ぬふりをするわけです。こうして、ある1社を再生させることで、これまで健全経営を続けてきた他の企業が経営不振に陥り、事業再生の対象企業となるのです。(p7)

 これを事業再生で考えれば、人材のリストラでしか収益を生み出せないのは、経営者と再生を主導する人間のスキルが劣っていることを意味します。事業再生とはすなわち、従業員の潜在能力を引き出し、社内の雰囲気を明るくし、一つの目標に向かって結束させることがすべてです。 (p182)

 

 無借金経営こそ本来あるべき姿であることを経営者はもっと理解すべきです。(p85)

 その意味で考えると企業の存在意義とは次の2点をおいて他にありません。①納税を増やす、②従業員の数と報酬を増やす  (p199)


 他人と比較する必要はありません。周りの目を気にすることもナンセンスです。とにかく、自分に負けないように、明るい未来を信じて、そのかわり他人の3倍は努力をしてください。(あとがき)

 

中小企業再生の新しい道標-事業再生の概念が大きく変わった!

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photo by Kazuyoshi Kato