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ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


どこにいるかではなく、どうやってそこに来て、どこへ行こうとしているのかを聞かせて欲しい

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 あなたは誰、なにしている人?
 そういう質問を人はするし、そうやって、職業や学歴や姿形でその人を、いったん把握しようとする。
 自分が誰かと知り合ったとき、たいてい、そうやって相手を把握して、できるなら名前を覚えようとする。
 そして、そういう人と、いつの間にか、ずっと仕事で顔を合わせることになり、いつの間にか、大事な友達になっている、そんなことがある。

 そして、ある時、急に、気がつくのだ。
 彼は、彼女は、いま、なぜ、どうやって、そこにいることになったんだろう?
 なんとなく想像はしていたけど、ちゃんと聞いてみたことがなかったな。

 で、僕は、10年以上もいつも顔を合わせていた、藤野さんに訊ねてみた。
 藤野さんは、僕が日本向けの商売を始めた時、大島紬の専門的なことをたくさん教えてもらったり、あるいは、出版記念パーティーの時、挫けそうな僕を力いっぱい支えてくれた人である。
 僕は、なぜ、いままで、藤野さんに、彼のストーリーを訊ねて来なかったんだろう?
 なぜ、藤野さんは、着物の業界に入ってきたん?

 僕よりすこしだけ年下の藤野さんは、Jwalkのボーカルの人とよく似ている。男前で、ファッションも、普通の40代よりずっとおしゃれだ。
 藤野さんは、じつは、バンドでドラムをやっていた。
 えっ~そうなん!?
 藤野さんが歳の割にははやりのJPOPが大好きで、コンサートに娘さんと一緒に行かれたりしている理由がやっとわかった。
 で、藤野さんは(ちょっと記憶が曖昧なので、藤野さん、間違ってたら訂正してね)、運送業を始めた。
 でも、藤野さんはバンドをやっていたので、PAのセッティングなどはある程度できる。なので、イベント会場に機材を運ぶ仕事があれば、PAのセッティングとテストまで、やっておきますよ、ということになった。
 藤野さんは、とても気遣いのできる、人当たりのよい、いつも細部にまで気を使った仕事のできる人だ。
 運ぶだけの人、PAのセッティングだけをする人はいるが、その両方をこなせて、間違いのない仕事をする人は、そうそう見つけることはできない。当然ながら、発注主は喜び、イベントの機材の搬出搬入の仕事は藤野さんにどんどん回ってくるようになった。
 いっぽう、藤野さんは、骨董品やこの業界の荷物を運ぶ仕事もやった。
 発注主の望むことを敏感に察して、一歩先のサービスをする藤野さんのことだ。
 こっちのほうでも、やがて任される部分が増え、結局のところ、そこまでできるなら自分で商売もやりなよ、その方が、実りが多い、そう言われて、自分でも商売をするようになった。
 藤野さんは、そういう流れで、僕らのすぐそばにやって来ていたのだった。
 僕は、藤野さんのキャリア、風貌、穏やかで、みんなに好かれる人柄など、見えているすべてのことが、ひとつのストーリーとしてつながり、深く納得した。


 誰にも、それぞれのストーリーがある。もちろん、僕にも、ここに来るに至ったストーリーはある。それは、2冊目の本に書いた。
 僕らは、そのことを、人それぞれのストーリーを、じっくり聞くことを忘れてしまいがち、あるいは、後回しにしてしまいがちだ。


 逆に考えてみる。
 たとえば、僕が誰かと知り合う。相手の人が、「何をやっている人ですか?」と聞いてくださるとする。
「ネットの古着屋です、着物の」と答える。
 だけど、ほんとうは、なぜ、僕がここにいるのか、語り足りない部分、相手に知っておいて欲しいことは、その言葉の何十倍、何百倍とある。
 場合によっては、それを聞いて欲しくて仕方がないときがある。
 しかし、たいていは、それを語るチャンスがない。
 そして、ずるずると、何年も顔を合わせてお互い信頼しているのに、相手のストーリーを知らないというようなことが起きるのである。

 また、この人ぞれぞれのストーリーというものは、過去の話に限定されるものではない。
 いま、何をしているか、だけでなく、これから何をしたいのか、ということも含まれる。
 もちろん、これから何をしたいのか、何になりたいのかということは、明確でない人もいれば、言いたくない人もいるだろう。
 でも、何をしたい人なのか、ということは、その人の過去の話と同様に、現在その人がどうであるかということよりも、その人の人となりを知るうえでは価値があるように思う。
 したいことが明確な人は、ほんとうは、それを公言したほうがいいし、周囲のひとも積極的にその望みを聞いてあげたほうが、どちらにとってもよい結果を生む。
 何がしたいか、公言したら、誰かが助けてくれるかもしれない。
 また、 何がしたいのかを訊ねて、相手が教えてくれたら、なにがしかの方法でその実現を助けることができるかもしれないではないか。
 僕が小説を商業出版したいとここで書いたら、読んでみましょうという出版社の方が現れたりしたように、である。

 
 つまり、こういうことだと思う。


 誰かのことが知りたかったら、現在いる場所だけではなく、その人の歩いてきた道、それぞれのストーリーを訊ねてみよう、これからどこへ行こうとしているのかを訊ねてみよう。 
 自分のことを知って欲しかったら、現在いる場所だけではなく、自分の歩いてきた道、自分のストーリーを積極的に話してみよう、これからどこへ行こうとしているのかを熱く語ってみよう。 

 

 

PS 藤野さんは現在、大阪で着物の買取をされています。間違いのない人なので、着物を売りたい方がおられましたら、どうぞ、お声掛けしてあげてください。

アンティーク着物藤乃

 

photo by Tom Eversley