人間は西部を目指す
もしゴールドラッシュの時代にアメリカで生まれていたら、どちらの道を選んだろうか。
1.金を掘りにいく
2.金を掘りにいく人たち向けの宿をつくる
もし、僕が若くて家族もなく、何も失うものがなければ、おそらく、1を選んだだろう。
だけど、僕に家族がいて、子どもたちにお金が必要だったら、2の道を選ぶだろう。
起業にもそういうところがある。
かつてはビジネスというのは、利益を生むこと、それがある程度の長期間にわたって得られることが必須であった。
だが、いまでは、ネット関連事業のスタートアップは、とにかく急速にユーザーを増やせばよい。利益はあとでついてくるから、というスタイルがひとつのスタンダードになっている。また、そういうビジネスは面倒な上場を目指すだけでなく、M&Aで買ってもらうという出口も一般的になってきた。
YoutubeやInstagramの大成功を目にし、また、そういったことに成功した人たちの声を始終聞いていると、つい、自分もそれを目指したいと思う。
それは、ゴールドラッシュの時代の、金掘りと似たところがあるように思っている。
そこで巨万の富を得た人がいる。
しかも、自分にもできそうな気がするのである。
そして、何百万人という人がそれを夢見て西部へ旅に出る。
金を掘りにいこうとする人たちの中には、とんでもなく切れる人もいる。そういう人たちが、さまざまな可能性をずっと考え調べ続けている。
金が埋まっていそうな場所は、そういう人たちがすでに徘徊して、ためしに掘ってみたところばかりだ。
言うまでもなく、それで成功する人はほんの一握りなのである。
大多数の人は砂金の一握りも手にすることができず、夢破れ墓に入る。
もし、あなたが、自分の力で、ある程度の期間で、どうしてもお金を稼ぐ必要があるというのなら、金を掘りに行くのではなく、金の掘る人たちに向けたサービスをすることをおすすめする。
そこには必ずなにがしかのニーズがあって、工夫次第でいくらかの利益をいただくことができる。金を掘る道具を売る、地図を売る、宿を経営する、娯楽を提供する、食糧を売る・・・ニーズはいくらでもある。自分でうまく提供できそうなニーズをみつけて、最初は低価格でそれを提供すればよい。お客様を得ることができたら、工夫を重ねることが利益を継続的に生み出すことになるだろう。
早く稼がなければならないと思いながら、まだ、YoutubeやInstagramの大成功に思いをはせている人は、西部の荒野の川で砂金を探しているようなものだ。
とにかく稼ぐためには、誰かの役に立つことを提供して、報酬を得る方法はないかと、リアルに考えてみたほうがよい。
とはいえ、僕も、よく金鉱脈をみつけることを夢見る。
結局、人間というのは、誰しも、ゴールドラッシュに駆けつけたいと夢見るものなのかもしれない。
PS 秋に発売予定の本でそういう話も書いてます
photo by G. Frank Peterson