ICHIROYAのブログ

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プラシーボ効果とアファーメーションの苦い思い出

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 小学校5年生の頃、遠足にあたって、担任の先生がバスで絶対に酔わない方法を教えるとおっしゃった。
 長いバスの時間に誰かが酔ってあげてしまうことはよくあることだったので、皆が固唾を飲んで聞き入った。
「5円玉を用意しろ。それを正確におへその穴にかぶせるようにバンソコウでとめてきなさい。バンソコウは5円玉の穴を塞いでも良い。それには科学的な理由があるらしい。詳しく説明はできないが、絶対に効くから安心しろ」
 先生は大真面目であった。

 さて、納得しない僕は、家に帰ってから母親に尋ねた。
「5円玉をおへそに貼るなんて、馬鹿げてない?先生、嘘言っているよね」
 母は笑いながら、「そりゃ、嘘やろ」と言った。
 その遠足で誰かが酔ったのかどうか覚えていないのだが、遠足のあとで僕は先生にねじ込んだ(嫌なガキ!)。あれ、嘘でしょ?!
 「ああ、嘘だよ。だが、それで絶対に酔わないと信じれれば、ほんとうに酔わずにすむことがあるんだ。それで、わざとあんなことを言ったんだ」

 「プラシーボ効果」という言葉を聞くと思い出すのは、その時のことだ。はてなキーワードによると、 

薬効成分を含まないプラセボ(偽薬)を薬だと偽って投与された場合、患者の病状が良好に向かってしまうような、治療効果を言う。偽薬効果。プラセボ効果。 一般的に30%程度に効果が現れ、副作用が生じることもある。

  
 一般的にはその存在を認知されているが、Wikiによると「プラシーボ効果」の真偽については、まだ科学的な反論もあるそうである。
 
 今朝、いつも読ませて頂いているウェイトリフターでブロガーのJamesさんの記事に、プラシーボ効果に関するわかりやすい実験が紹介されていて印象的だった。それは1972年の古い実験なのだが、僕は初めて目にした。

 被験者に11週間のトレーニングを受けてもらう。
 被験者はこのように説明を受けた。
 最初の7週間でもっとも成績の伸びたもの6人は、次の4週間、アナボリックステロイドを投与してトレーニングを続けることができる。
 最初の7週間が終わり、成績に関係なく6人がランダムに選ばれた。
 その6人は次の4週間、ステロイドのかわりに偽薬を投与されてトレーニングを続けた。
 結果は驚くべきものであった。
 スクワット:最初の7週間で平均増加重量 2.6kg 最後の4週間で平均増加重量 18.9kg
 ベンチプレス:最初の7週間で平均増加重量 4.5kg 最後の4週間で平均増加重量 13.3kg
 ミリタリープレス:最初の7週間で平均増加重量 0.7kg 最後の4週間で平均増加重量 7.6kg

 
 Jamesさんも書かれているように、僕らには巡航速度みたいなものがあって、普段はそれで運行しているが、ギアチェンジしてそのさらに上のパーフォーマンスを出す力が眠っていることは間違いのないことのように思える。
 
 もし、このプラシーボ効果を自分のパーフォーマンスにいかそうと思えば、「一点の曇りなく信じる」ということが必要とされる。
 だが、それが難しい。
 たいていの場合、その結果について、100%の確信をもたずに、懐疑とあきらめに振れながらもなんとか努力を続けるというのが、一般的なパターンだと思う。

 ただし、自分が上位者である場合は、意図的に利用することはできる。
 先生と生徒、親と子供などの場合である。あるいは、上司と部下の場合も、お互いの信頼関係が強固な場合、うまく使うことができるかもしれない。
 まあ、しかし、僕のようなクソガキと先生の意図を理解できなかった親もいるので、それも簡単ではないかもしれない。それでこそ社会は健全であるとも思えるのだが。

 
 ところで、よく似た話にアファーメーションというのがあって、去年の12月1日に、僕は心から実現したいこととしてふたつのことを「なんでもノート」の後ろ開きに書いた。アファーメーションというのは、実現したいことをノートなどに書き留めるとそれが現実のものになるということである。
 もう白状しよう。
 ふたつ書いたことのうちのひとつに、僕はこう書いた。

「私、和田一郎は、『僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと』という本を出版してアマゾンのビジネス部門で1位になる」

 当然ながら、ならなかった。
 「ビジネス部門」の下位カテゴリの「ビジネス実用」のさらに下位カテゴリの「ビジネスライフ」で、瞬間的に一位になっただけであった。(それでも、もちろん、僕にすれば上出来です。すでに三刷目に突入しました! みなさん、ありがとうございます!) 

 そして、僕はそれを後ろの見開きの目立つところに書いたこのノートを、まだ本が出る以前に、ある着物の市場で忘れてしまった。いろいろなことを書いてはあるが、持ち主の名前と連絡先を書いておくのを忘れた。
 しかし、すぐにその市場のスタッフから電話がかかってきて、「ノート忘れられませんでしたか?」と訊ねられた。
 持ち主が判明したのは、当然ながら、後ろ開きに書かれた僕のアファーメーションを読まれたからであった。
 穴があったらマントルまで掘り抜いて地中深くに消えてしまいたい思いだった。 

 どうやら、懐疑的な僕が、濁った心で、アファーメーションを利用しようとしたのが大きな間違いだったようだ。
 今日の長い記事は、結局、プラシーボ効果とアファーメーションは、使える人にはうまく使えるが、うまく使わないととっても恥ずかしいことになるかもしれないのでご注意をということにオチてしまった。


photo by greg westfall