きのう生まれてはじめての体験をした
この歳になって、きのう生まれてはじめての体験をした。
ああ、かっこいいな、僕もしてみたいなと思ってはいたのだ。
シンプルなTシャツに、あれ。あるいは、はだけたシャツの間に揺れるあれ。
さらに、かっこいいヤツは、小指とかにもキラッとあれ。
そして、耳にも小さくあれ。
そう、メンズのシルバーアクセサリーである。
あれをできるかできないかのところに、なんだかオシャレさんとそうでないものを峻厳とわける分水嶺があるような気がしているのだ(超個人的見解!)。
とてもオシャレとはいえない僕にはできない。
男前でもなく、ときどきグルーミングもいいかげんな僕が、シルバーアクセサリーなんか、笑止!と思っていたのである。
しかし、あれを普通にやっている連中、とくに、中年期にあってもそれをさらりとやっている仲間が、とてもかっこいいなと憧れていた。
そんな僕が、きのう、HEP FIVEのメンズアクセサリーの店で、シルバーの星の形のペンダントネックレスを買ったのである。
自分で買ったことはおろか、つけてみたこともない。
買ったあとにちょっとした宴会があったのだが、そこにつけていく勇気はなく、かばんにそっとしまって参加した。
宴会がそろそろ終了という頃、僕はかばんからポケットに移し、トイレに行って、鏡の前でそれをつけてみた。
シャツのボタンをふたつほど外し、無地のTシャツの胸を出して、その真中に銀の星を置いてみる。
WOW!
たしかに、その部分だけを見れば、かっこいい。
首から上を見ると、がっかりするので、極力視線は首下に固定して、ちょっと斜め向いてみたりする。
ちょっとしたことだって、いくつになっていたって、やっぱり初体験はワクワクする。
僕は超ごきげんになって、席に戻った。
うん。
その後、宴席はなにごともなく進み、お開きになった。
そうだよね、誰も僕の胸元に、生まれてはじめての銀のスターがキラキラと輝いて、僕の胸もドキドキしていることなんて、気にしない。
まあ、ちょっと、寂しかったけど、帰りの電車の中でも、ちゃんと胸を張って座席に座ってみて、ごきげんな気分を少し取り戻した。
ともかく、パーティにはこれをぶらさげていくよ。
オシャレさんへの分水嶺を超えることができたかどうか、それにはまったく自信がないけど。
こんなおやじを笑わないで。
photo by Michael