大リーグの公式グッズをつくる会社を立ち上げた若者はゼロからのスタートだった
自分で商売を始めるネタは無数にあると思う。いつも書いているように、僕の周りにも少し頑張れば普通に稼げる仕事はたくさんある。いまはそれより自分の好む方法や、やや効率のよい方法をやっているために、それをしないだけである。もし自分のビジネスが潰れてしまったら、きっとそれをするだろう。
ただ、そういうことは、自分がある分野の商売をやっていないと見えてこない。
僕が会社員時代にそれが見えなかったのは、そのためだと思う。
さて、今朝、また素敵なビジネスを立ち上げた若者の話を読んだ。
How a Long-Suffering Mets Fan Built a Business From His Pain
オリジナルのプリントTシャツを作って売る商売がある。
そういう商売は、どんなデザインのTシャツを、どんなタイミングで、誰に売るのかというのが一番のポイントになると思う。
品質ではユニクロに勝てるはずがないから、購買意欲を高めるサムシングが必要になる。たとえば、USJに行って、記念にハリーポッターのTシャツを買って帰るという具合に。
アメリカのメジャーリーグのTシャツも、同じ意味で大きなニーズとマーケットがある。それぞれのチームのファンが買ってくれるからだ。
しかし、それはあまりにビッグビジネスなので、そこに参入するには余程の資本力やツテが必要ではないか、と思ってしまうのが普通だ。
だが、The 7 Line というニューヨーク・メッツのファンのためのTシャツやグッズをつくる会社を創業したのは、ひとりのファンの若者、ダーレン・ミーナンさんだったのである。
しかも、それはたった数年前のことで、大きなお金やツテを持っていたわけではないのである。
お爺さんが球場で働いていたほどで、彼は子供のころからニューヨーク・メッツの大ファンであった。
彼はオリジナルのTシャツを自分でつくって販売する商売を始めた。
ある時、球場へ応援に行くとき、「I Survived」*1という言葉をプリントして着ていった。
それを見たファンの人から、どこで買えるのかと訊ねられたことから、メッツを応援するためのTシャツの販売を始めた。
たとえば、彼のプリントする言葉はメッツファンに刺さるものばかりだった。
たとえば、不振続きの時につくられたTシャツには「This Team Makes Me Drink」(このチームのおかげで飲まなきゃいられないのさ)という言葉がプリントされており、それが人気になった理由はよくわかる。
オフィシャルのTシャツがあったとしても、そんな台詞はオフィシャルグッズにはプリントされないだろう。
彼はそれを注意深くやった。
メッツの色とフォントは使いながら、チームの名前や選手の名前は一切ださなかった。
彼のつくるTシャツはメッツファンの間で大人気となり、今では、大リーグのオフィシャルグッズとして承認されている(ギャランティーを払うかわりに、チームのロゴが使え、また球場で販売してもらえる)。
また、年に何試合かは、何百席かのチケットをまとめて買い、特別プリントのTシャツとチケットを一緒に販売している。
球場に行けば、彼が押さえたその席一帯が同じTシャツを着たファンで占められることになる。
現状だけを見れば、ダーレンさんの目覚ましい成功は、彼の個人的な資質や能力におうことが大きいように思ってしまう。 たしかに、ダーレンさんのビジネス面でのスマートさを如実に示すエピソードは、記事のなかにもいくつか紹介されている。
だが、ダーレンさんのこの起業物語はいくつかの大切なことを僕らに教えてくれるように思う。
きっと、それは僕らにも役に立つ。
こういうことだと思う。
・彼はメッツの大ファンで、ファンの気持ち、つまり顧客の気持ちを充分過ぎるほど理解していた。
・最初からオフィシャルグッズという大きなマーケットを狙ったわけではなく、できることからやった。到達点だけを見れば不可能と思えることも、一歩一歩進むことで達成することができた。
・好きなことを、楽しんでやった。