たまにはスケートに行こう!
冬と言えばスケートだ!
たぶん、そういう人は少ない。
スケートを楽しむ人はどんどん少なくなり、関西でもスケート場はどんどん閉鎖された。
僕らが子供の頃、僕の周囲では「スケートをやったことがない子」の方が少数派だったように思う。
しかし、たぶん、いまの若い人にスケートの経験を尋ねたら、まったくない人の方が圧倒的に多いのではないかと思う。
僕は大学時代アイスホッケーをやっていて、冬には白樺湖合宿という楽しみがあった。
白樺湖の湖面は厚い氷で閉ざされる。
その上にはもちろん雪が積もるわけだが、その雪をどけてスケートリンクにして、貸してくれるのである。
そういう簡易なものだから、少し滑ると氷はゴリゴリのデコボコになる。
削れた氷が粉になり、それが氷面にたまるので、パックが滑らなくなる。
もちろん、フェンスもない。リンクとそれ以外を仕切っているのは、低い雪の壁だけである。
練習は不便極まりない。
ときどき練習の手を止めて、雪や氷の粉をはき出さなければならない。
シュート練習をすると、パックがリンクの外に飛んでいってしまうので、雪の上を踏み分けてそれをとりにいかなくてはならない。
全部のパックを集めることができないので、いつの間にかパックが減っていく。
氷には充分な厚みがあるのだけど、陸地のそばなどでは部分的に薄いところがあって、踏み抜いてしまうこともあった。そのまま練習を続けていると、水が凍って凍傷になってしまうのではないかと心配になる。
そんな屋外のリンクだが、練習には良い面もある。
ひとつは風だ。
湖上にはよく風が吹いた。
風を受けて走ると、屋内では感じることのない重い負荷を感じるのである。
風下に向かうときはらくらくだが、風上に向かうときは普段の何倍もの力がいる。
また、リンクとする湖面の氷は荒れ放題である。
荒れ放題のリンクを滑ると、足にいつもより力が必要になり、しっかりと氷をかんで滑れるようになる。
練習は朝の1時間スケーティングから始まる。
まだ暗い時間からよーいどんでリンクの周回の競争である。
強い風に吹きさらされ、足元のはっきり見えないまま、必死で走る。
それを1時間。
遅いものは追い越される度に、先輩からスティックでおしりを打たれる(パッドが入っているので痛くはない)。
顔が寒いのでタオルで口を覆っているのだが、それがその形のまま凍る。
やがて、周囲が明るくなり、夜が完全にあけたころ、1時間の地獄が終わる。
合宿の一日の一番苦しいハイライトはそれで終わり、素晴らしい爽快感に包まれたものだ。
練習そのものはきつく、特に下級生の間は恐怖以外のなにものでもなかったが、スケート本来の楽しさが味わえる面もあった。
スケートそのものも楽しいのだが、そこでスピードを競ったり、パックを取り合いしたり、ダンスしたりと、スケートを履いて、その上で何かをすると、もっと楽しい。
混みあう屋内のリンクではそんなことはできず、スケートの楽しみの半分以上は味わえないままだ。
だが、屋外の広いリンクなら、楽しみ方はたくさんある。
スティックを握ってパックを叩いてみれば、すぐにその楽しさが実感できるだろう。
まあ、しかし、それも年寄りのノスタルジアにすぎない。
少子化はすすみ、商業リンクは維持できず、屋外のリンクもさまざまな問題に阻まれて増えることはないだろう。
寂しい限りだ。
でも、スケートはやっぱり楽しい。
そういえば、テレビではよくフィギュアを見るけど、最近ぜんぜんスケートやってないな、子供連れて行ってみようかと、あなたが思ってくれたら、僕はめちゃくちゃ嬉しい。
*photo from BiblioArchives / LibraryArchives