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ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

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「知らないことを知っていること」と「知らないことすら知らないこと」

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                                                                           photo by Gage Skidmore

 

 ラムズフェルド元国防長官の言葉に、こういうものがあるそうだ。
 非常に面白い文章なので、英語がOKの方はぜひ原文を一読して、その意味を考えてみて欲しい。

“There are known knowns; there are things we know we know. We also know there are known unknowns; that is to say we know there are some things we do not know. But there are also unknown unknowns — the ones we don’t know we don’t know.” – Donald Rumsfeld

 
 彼によると、僕らが置かれている世の中には3種類のことがある。

1.「known known」  (知っていることを知っていること)
2.known unkown」  (知らないことを知っていること)
3.「unkown unkown」 (知らないことすら知らないこと)

 たとえば、僕が、「自然素材*1で作られた古いテキスタイルの研究者」だとする。
 研究を始めたばかりのころ、博物館で現物を見たり、本を読んだりして、大きな分類や代表的なものを把握する。
 そして、フィールドワークでみつけた古布をつぎつぎ見分けることができるようになる。それらは「known kown」、つまり、自分が学んで「知っていることを知っている」ものだ。
 この段階で、僕は「自分は自然素材の布についてはほとんどわかった!」と思ってしまう。
 
 しかし、研究を続けていくうち、はっきりと識別できない古布に出会うことがあり、そういうもののグループがいくつかできてくる。だけど、それが何かはわからないので、とりあえず自分の中で「X1」とか「X2」と分類しておく。そして、そのグループに入るものが増えていく。
 これらのものが「known unkown」、つまり「知らないことを知っている」ものたちだ。
 そして、この段階で研究者は、自分の知らないものに多く出会い世界の広さを知る。が、調べるうちに判明してくることも多くが、時間さえかけて調べていけば、自分は「すべてを知っていることができる」と思っている。

 さて研究を続けるうちに、「X1」にも「X2」にも名前がつき、その素材やつくりかたや時期や場所もわかるようになってきた。その分野の研究者としては第一人者といっても良いほどになり、フィールドで出会う古い自然布のほとんどは見分けることができるようになった。
 しかし、である。
 それでもたまに、研究者は、いまだ見たことがないような自然布に出会うことがある。そして、その頃には研究者は知ることとなる。
 どこまで行っても、「unkown unkown」、つまり、「知らないことすら知らない」自然布が存在して、自分がすべての自然布を知り尽くすことは不可能なのだと。さまざま風土のさまざまな時代のさまざまな階級のひとの自然素材を使った営みと工夫は、ひとりの人間が何十年かけても知りつくすことはできないのだと。

 ラムズフェルド元国防長官のこの言葉は、とても示唆に富んでいると思う。
 僕らは、「known unkown」、「知らないを知っていることがある」ことは認めやすいけれど、「unkown unkown」、「知らないことすら知らないことがある」ことは、頭で理解はしていても忘れがちだ。

 マスコミやネットで出会うさまざまな言説は、「unkown unkown」があることを置き忘れておこなわれているものが多い。
 あるいは、話がわからなくて理解しようとしているとき、「known unkown」の領域にあるものはなんとか想像もできるけど、想像すらできないのは、自分の「unkown unkown」の領域にあるからなのかもしれない。
 
 「unkown unkown」の存在をつねに念頭において、慎重に判断せよ。
 それがラムズフェルド元国防長官が僕らに与えてくれるメッセージだ。
 だけど、もうひとつ、大きな意味がある。
 
 歳を重ねてある程度の経験を積んでくると、世の中を「known known」と「known unkown」に二分する癖がついてしまい、「unkown unkown」がいかに無限に広がっているかということを忘れてしまいがちになるのだ。
 いくら歳を重ねても「unkown unkown」が無限に存在しているということは、自分の無知を知るという知恵であるだけでなく、まだまだその存在すら知らないわくわくすることが、この世の中には溢れているということでもある。

 そうだ、たしかに、忘れていた。
 僕はもう55歳だけど、「知らないことすら知らないこと」が無限にある!
 捨てたもんじゃない。

 
*Mediumの人気記事「 I Know Nothing」でこの言葉を知りました。この記事ではゲームにたとえて解説しています。 

*1:綿、麻、芭蕉、オヒョウ、シナなど様々な素材とつくりかたがある