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ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


あなたの仕事にどれほどの価値があるか、忘れてはいませんか

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 この女性を覚えているだろうか。
 スタートレックの「ウラ」(原作「ウフーラ」)である。
 僕は子供のころに吹き替え版を見たはずだが、彼女のことははっきりとは覚えていない。
 だが、ニシェル・ニコルズが演じるウラを見て、その後の人生を変えた人が多く存在する。
 
 スタートレックがアメリカのテレビで放映され始めたころ、1960年代後半は人種差別が色濃く残る時代だった。
 アメリカのテレビドラマに、黒人がレギュラー出演した、しかも、メイドなどの役ではなく主要人物のひとりとして登場したのは、このウラが最初のことであった。
 『新スタートレック』でガイナンを演じたウービー・ゴールドバーグも、黒人女性として初めてスペースシャトルで宇宙に行ったエマ・ジャミソンも、ウラを見て勇気づけられ、その道を歩む決意をした。
 そして、数えきれない黒人男性、黒人女性がウラの姿に大きな勇気をもらったのである。

 しかし、実は、ニシェル・ニコルズは、その第1シーズンを終えたとき、その役を降りようとして、すでにそのための手紙を書いていたのである。
 女優で歌手でもある彼女は、ブロードウェイに戻って、舞台でのキャリアを追求したいと思っていた。
 不思議なことに、彼女は、彼女がウラとして全米のテレビに自分が登場していることの意味、それがいかに多くの人々を勇気づけているかを、知らなかったのである。
 
彼女の気持ちを変えたのは、誰あろう、キング牧師であった。
 すでに辞めるつもりでいたニコルズに会ったキング牧師は、彼女のファンであることを告げ、辞めてはならないと説いたのである。

あなたは辞めることはできない。わかっているのですか?あなたはテレビを永久に変えてしまったのです。それは黒人の役割を、ではありません。女性の役割を変えたのでもありません。これからのテレビは様々な人種の女、様々な人種の男たちであふれるでしょう。ウラはほんとうにユニークや役で、わたしたちがそれを求めて行進していること「平等」の変換点なのです。それこそ私たちが行進している理由です。私たちがそれをテレビで見ることになるとは思ってもみませんでした。*1

 

  キング牧師からそのように言われたニコルズはとても驚き、はじめて自分の仕事にどれほどの意味があったのか、どれほど多くの人々を勇気づけていたかを知ったのだ。

 さて、このことを知ったのは、おなじみJames Clear氏のブログ記事だが、彼はこの話をひいて、いかに僕らが普段の自らの仕事を過小評価しているか、ということを述べておられる。
 どんな仕事でも長く続けていると、その仕事にたいした意味がなく、実際は役に立たないものであるという理由ばかり思いついて、やがて、仕事そのものの価値を感じられなくなってしまう。
 しかし、どんな仕事も、それがニコルズのような脚光を浴びる場所でなくても、人がそれぞれ自分のやるべきことを黙々とこなすことは、じつは、ある人々にとっては大きな光になりうることを忘れてはならない、と。

 彼の印象的な言葉をそのまま紹介しよう。

 Ordinary to You, Amazing to Someone Else
 あなたにとっての普通が、ほかの誰かにとって驚くべきこと

 

 
 
 僕もこんな体験をした。
 阪神淡路大震災の年、僕は大阪の梅田の百貨店で、家庭用品のマネージャーをやっていた。
 百貨店では花型部門はもちろん婦人服や紳士服で、家庭用品部というのははっきりした脇役で、利益への貢献もほとんどないという部門だ。僕ももちろんそういうことは胸に沁みこんでおり、また、日々、上層部からの指示や競合店との競争や様々なトラブルに翻弄されて、何のために仕事をしているのか、僕らの仕事、お鍋やガラス食器やトイレタリー用品を売ることにどれほどの意味があるのか、わからなくなっていた。
 そして、地震。大阪に住んでいた僕は、深夜、大きな揺れがきて飛び起きたが、ニュースを見る限りではどんなことが起きているのかわからず、またそのまま眠りについた。
 朝起きてみると、あの状況である。
 僕はなんとか会社まで出勤し、売場や倉庫のガラスや陶器がひどいことになっているところを見た。しかし、最悪の事態にある時、僕らには現場へ行くこともかなわなかったし、ほんとうに何もできなかった。
  さて、事態が少し落ち着き、皆が出勤してきた頃、売場には様々な電話が入ってきた。
 様々な生活用品、たとえば、ポリタンク、カセットコンロ、ビニールシートなどが必要になり、被災地やその周囲から売場に電話が入るのである。
 部長は皆を集め、お客様が必要とするもの、それがたくさん必要と予想されるものは、可能な限り仕入れして、お客様に提供せよ。それで在庫が膨らんでも、売れ残ってもかまわん、と指示された。
 僕は、そしておそらく家庭用品のみんなが、自分の仕事の価値を「発見」したのである。
 普段は忘れてしまっていた、「カセットコンロを売る」ということの、ほんとうの価値を。
 

 
 Jamesさんの言うとおりなのだ。
 僕らはついつい、ちょっとした嫌なことや、外聞や、批判精神を貯めこんで、他人の仕事だけでなく、自分の仕事をも貶めてしまう。
 でも、ほんとうのところは、それぞれの仕事は、それぞれが精一杯誠意をもって取り組んでいれば、そのコアには変わらぬ価値があるのだ。
 その仕事に光が当たる時もあれば、当たらない時もある。
 光が多く当たる仕事もあれば、そうでない仕事もある。
 ただし、そこに揺るぎない価値があるということは、けっして忘れてはならない。



*1:訳が怪しいです。原文 “You cannot,” King said. “You cannot leave. Do you understand? You have changed the face of television forever. This is not a black role. This is not a female role. It can be filled by a woman of any color, a man of any color. This is a unique role and a unique point in time that breathes the life of what we are marching for: equality.” He went on, “This is why we are marching. We never thought we’d see this on TV.” 出典StarTalk Radio with Neil DeGrasse Tyson: A Conversation with Nichelle Nichols. July 11, 2011.