19の中小企業を成功に導いた6つの考え方~『「小さな神様」をつかまえろ!』を読んで
新刊が送られてきた。
『「小さな神様」をつかまえろ!』(PHP研究所)
JBPress副編集長の鶴岡弘之氏が「日本の中小企業」コーナーに連載されている記事から8つを1冊にまとめたものだ。
鶴岡さんは弊社にも来ていただきこんな記事(敗北のサラリーマンが“地べた”で発見した手つかずのマーケット)にしてくださったのだが、この記事も収録してくださっている。
鶴岡さんが取材に来てくださったとき、今をときめく『JBPress』の副編集長さんであり東大文学部卒業の方だとわかったので、かなり緊張した。しか し、お会いしてみると、肩書には似合わぬ腰の低い話のしやすい方であった。数歳年下だけどほとんど同じ時代を生きて、しかも、『行き当たりばったり』な人 生を送ってきたところも、僕とそっくりであった。
鶴岡さんは東大文学部の美術史学科を卒業後、畑違いの電機メーカーに入り、その後日経BP社の記者になり、JBPressの立ち上げにかかわって現在にいたっておられる。
僕も農学部水産学科卒業後、百貨店に入り、結局いまはこうして古着屋になっている。
こういうのを、『行き当たりばったり力』っていうんですよね、と鶴岡さんがしみじみと仰っていた。たしかに、ICHIRO選手や本田選手のように天職を もって生まれてこなかった凡百の僕らは、人生の大きな部分を運や偶然にまかせざるを得ない。いわば、しょせん『行き当たりばったり』なのだけど、そこで出 会ったものを自分のものにできるかどうか、それが『チカラ』なのであって、たしかに『行き当たりばったり力』と呼べそうなものこそが人生の鍵のような気も するのだった。
鶴岡さんは僕のことを『行き当たりばったり力』で天職をつかんだひとのひとりというように書いてくださっているけど、ほんとうは、鶴岡さん本人がその言葉に一番相応しい。
もともと若いころはモノを書くことが夢だった鶴岡さん。長い回り道のすえに、結局は大きなメディアの中心にいて、自身が興味をもち世間に広く知って欲しい と思う中小企業の取材と執筆をされている。もちろん、それには、いったん電機メーカーやコンピューターメーカーで普通に会社人としてのキャリアを積まれた ことが、大きな武器になっている。
鶴岡さんには、今回の本とは別に『一億人に伝えたい働き方』という著作もある。
どちらも、独自の道を行く中小企業にスポットライトを当てたものだ。
この2冊の本を通して読ませていただいて、僕はめちゃめちゃ元気をいただいた。 56才だけど、まだまだやれる、まだまだやらなくちゃ、と。
2冊で合計19の中小企業の例が紹介されているのだけど、そのひとつに僕などが加えてもらっても良いのかと、恥ずかしくなるような凄い社長さんたちばかりだ。
まったくもって、恥ずかしくなってしまった。
この2冊の本は起業を考えているひと、中小企業の経営者だけでなく、すべての働くひとたちに勇気とヒントを与えてくれると思う。
鶴岡ファンの僕としては、どちらも買って読んで欲しいのだけど、このブログを読んでくださっているかたのために、2冊を読んでいまさらながらに学ばせていただいたエッセンスを簡単に紹介しよう。
以下の記事を読んで、何がしか感じるところがあれば、ぜひ2冊とも購入して通して読んで欲しい。
ビジネスと人生に効く素晴らしいエッセンスが詰まっている。
一億人に伝えたい働き方 無駄と非効率のなかに宝物がある (PHP新書)
- 作者: 鶴岡弘之
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/06/28
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
1.『小さな神様』はいる
僕が露店で古着に出会ったのは、たしかに、『小さな神様』がそこに導いてくれたような気がする。クラゲの水族館で有名な加茂水族館が絶体絶命の危機からよみがえったのは、『小さな神様』がクラゲの姿を借りてやってきて囁いてくれたからだ。
僕もたしかに信じている。
一生懸命考え抜いて、一生懸命やってみたら、きっとそこには『小さな神様』が現れてそっと解決策を囁いてくれるのだ、と。
2.人にはそれぞれの道がある
事業を興した人も先代の会社を引き継いだ人も、それぞれの必然の道を歩んでそこに至っている。なぜ、その人がそれをやっているのか、ということについて、それぞれの納得のいく物語りがある。
人はやはり、人それぞれの定められた人生を歩む。
3.『バカ』でも全力でやれば道は開ける
周囲は、すぐに言うのだ、「バカちゃうか」と。
クラゲで世界一の水族館にするとか、塩だけの専門店をするとか(パラダイスプランさん)、ガソリンスタンドがきのこをつくりはじめるとか(石橋さん)、生んだばかりの卵だけの直営店をするとか(コッコファームさん)とか、例を挙げればきりがない。
そういえば、僕も、「海外にネットでキモノなんて売れない」って言われたものだ。
「バカちゃうか」という声、それをものともせず、加茂水族館のレベルまで突き抜けてやれば、必ず道は開ける。
4.ロジカルシンキングがイノベーションを生む
早朝にではなく、昼にお客様のお宅に牛乳を届ける、牛乳宅配のミルズの社長さんの『いえいえ、イノベーションをおこそうなんて発想はないのです』という言葉にはっとさせられる。
イノベーションというのは、目的ではない。新しい製品、新しいマーケティングはイノベーションであるけれど、それは「イノベーションをしよう」と思って達成されてたものではなく、「お客様とより良い関係をつくろう、より良い製品をつくろう」とした結果が、ある一面から見たらイノベーションだったね、という話なのだ。
長時間の丁寧な接客をするカメラ販売店「サトーカメラ」さんの、一見不効率極まりない販売方法も、ロジカルシンキングの積み重ねがそこに辿りつかせている。不効率な販売が、逆に業界水準をはるかに上回る販売効率をあげておられるのだが、それは奇手妙手や思いつきが生んだものではない。
5.アイディアは案外簡単だ!
ゆるみ止め性能世界一と言われる「ハードロックナット」などを開発されたハードロック工業の若林社長がおっしゃっているそうだ。
「みんな、発明は難しいと言うけど、決してそんなことはありません。結局は、組み合わせなんですよ。世の中が複雑になればなるほど、組み合わせに使える要素がいっぱいあるんですから」
6.動機の深さ強さがすべてを決める
宮古島の産業復興を願うパラダイスプランさん、障がい者を雇用し林業の再生と通して地元の過疎化を防ごうとしておられる石橋さん、社員の7割以上が知的障碍者であるチョーク製造の会社日本理化学工業。
ここに紹介されているひとたちの思いは熱く崇高だ。
結局のところ、動機の強さや深さが会社の器を決めるのだと思う。大きくなることがベストとは限らない。ほんとうに、その会社が今やっていることは、それぞれの動機や目的を達成するために最適な器になっているかどうか。
それこそが一番大事なのではないかと思う。
PS 鶴岡さん、本当にありがとうございました!僕も頑張ります!
photo by Little Visuals