アメリカ家庭に日本の最先端文化があまねく普及する日は来るのか?
先日、アメリカの知人が夫婦で弊社に来てくださった。
かなり裕福な方のようで、スケールの大きな話に時々理解がついていけなくなる。たと えば、家の敷地にコヨーテが忍び込んで犬を殺してしまうとか、立ち上がれば2メートルもあるドイツ原産のなんとかという種類の犬を飼っているとか。そんな 大きな犬、どうやって散歩させるんですかと聞いてみたが、スルーされた。というか、球場が何個もはいるような森を含む広大な敷地があるので、リードをつけ て散歩するなどということは想像の外で、もともと下手な僕の英語が伝わらなかったのであろう。
ほとんどの話は奥様がされて、ダンナさまは奥様のおしゃべりの間隙をひたすら待っているような様相だったのだが、ひとつのトピックスにいたり、ダンナさまが急に饒舌になった。
ダンナさまはホテルについていた洗浄トイレに、とにかく感動されたようなのだ。
眼をつぶって「はああ~~~~~~~~~~~~~」。
「シートが暖かいんだよ!腰をおろしたら、はああ~~~~~~~~~~~」。
寡黙だったダンナさまが急に、そのときの至福の表情を再現しながら洗浄トイレの凄さを熱く語りだした。
「で、ボタンを押したらシュワシュワ!!!!はああ~~~~~~~~~~~」。
至福の表情。
「はあはあはあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」。
「で、乾燥ボタンを押したら、ぶ~~~~ん!!!! はああ~~~~~~~~~~~~~~」。
間違いなく、今頃はおふたりのその邸宅のトイレには、洗浄トイレがついている。
ちなみに、欧米の方が日本に来て驚くことのトップ10に、必ず洗浄トイレの話がはいる。
アメリカでは洗浄便座は一般的ではない。一部のセレブやアーリーアダプター(流行に敏感な人)にだけ使用されている。
Wikiによると南欧では伝統的にビデが一般的であるそうだが、ダンナさんのカルチャーショックを見てもわかるように、便座が暖かく洗浄も乾燥もできるトイレというのは一般のアメリカ人には完全に想定外のものなのだ。
しかし、そのアメリカに洗浄トイレを売り込もうとしている日本人がいる。LIXILグループ(INAXブランドを展開)のCEO藤森義明氏だ。Wall Street Journalに語ったとして、Mashableの記事にも書かれているが、買収したAmerican Standardという会社を通して、2018年までに5000万ドル(約50億円)を売る、そのための宣伝に3百万ドルから5百万ドル(3億円から5億円)を投じる計画だという。
アメリカで売られている主力の商品はこちらだ。
さあ、ここで質問だ!
あなたは日本のようにアメリカの一般家庭にも洗浄トイレは普及すると思うだろうか?
そうなれば、おそらく藤森氏の目論見をはるかに上回る市場が出現するだろう。
このページによればすでに普及率が70%を超えている日本の「温水洗浄便座」市場ですら831億円もあるそうだ。いまから普及するとなれば、いったいどれほどの規模になるだろう。
YES? NO?
もちろん、僕にも確たる答えはない。
だけど、生まれたときから洗浄トイレが存在していた若いかたにはわからないだろうが、「ウォシュレット」が売りだされたときの衝撃を僕はまだ覚えている。
なんでわざわざトイレの穴からシャワーのノズルを伸ばして、うんちするたびにお尻の穴を洗わなくちゃなんないんだって、子供ごころに思ったものだ。
子供の僕だけでなく、賢いはずの大人たちも、現在の普及を予想できたひとはごく一部だったはずだ。
それがいまでは僕もあなたも「はあ~~~~~~~~~」なのである。
さあ、どっちだ?
YES? NO?
photo by Arno Meintjes