歩くことで創造性がアップするという科学的な証明がされた~アイディアが欲しけれや、熊になれ!
考え事をするとき、僕は熊になる。
まさに動物園の熊みたいに、部屋の中を行ったり来たりする。
なぜそうするかと言えば、座ったままより、そのほうがいいアイディアが浮かぶからだ。
みんな、そうでしょ?
違うの?
いつだったか、嫁がそうやって考え事をしている僕のことを、「熊みたい」って言うので、そういえばそうだなと納得したのだが、同時に「20年以上一緒に暮らしているのに、嫁が熊になっているのは見たことがないな」とちょっと不思議に思った。いや、しかし、嫁はそもそも僕のように考え事をしないタイプなので、熊にならないのかな、と思ったりもした。
まあ、ともかく、考え事をするとき、熊になる。
ブログを書くときも、材料を頭に放り込んでから立ち上がり、事務所や部屋の中を行ったり来たりして、構想をまとめてから書くことが多い。
で、実感として、熊になると、いいアイディアが出るし、ブレイクスルーが生まれたりする。それはおそらく、動くことで、脳内の血のめぐりがよくなり、それが新しい要素をくっつけたり変形したりすことの手助けになっているんだろうなと、想像していた。
で、僕の想像を裏付ける研究成果が最近アメリカで発表されて少し話題になっている。
この記事「In a creative slump? Take a walk.」に取り上げられている研究によれば、やはり「歩く」ことでひとの創造性は向上するようなのだ。
創造性のテストは、ありふれたものを、どんなことに使えるかを訊ねることによって行った。たとえば、ボタンを見せて「本来の用途以外にどんなものに使えますか?」と訊ねる。「ドールハウスのドアノブとか、人形の目とか、たくさんつなげてザルにする」とかの答えを得る。その答えの中から、現実的ではないもの、ほかの人の答えと重複しているものをのぞき、ポイントとする。
この試験を、ウォーキングミル上で歩いているときと、座っているときに行った結果、48人の被験者のうち、81%の被験者でポイントの向上が見られたという。
面白いことに、もうひとつの試験、「3つの単語とつなげることのできるひとつの単語は何か答えなさい」(たとえば、「Swiss、cake, cottage」の答えは「cheese」)という質問には、歩いているときと座っているときの正解率はほとんど変わりがなかったという。この試験に必要なのは、先の質問のような様々な組み合わせを試して新しいアイディアを出すような思考ではなく、記憶の中にあるものを、単に探し出すという思考である。
こういった研究は、答えが想像どおりで面白味はないのだけど、たしかに、いままで多くのひとが実感としてもっていた仮説を、はじめて科学的に検証したという意味では意義があると思う。
で、僕は、この実験結果に促されて、記事のネタが浮かばないときなど、ますます激しく部屋の中を往復して、イラついた熊のようになるだろう。
僕の場合、そんなとき、たまにそばにいるのは嫁だけだから、さほど問題にはなるまい。
しかし、大きな会社の企画部とか宣伝部とかの偉いさんがこの実験結果を知ったら、ちょっと厄介なことになるかもしれない。
その部長さんのオフィスでは、配下のスタッフたちがみんな上の空でぶつぶつ独り言を言いながら壁と壁の間を行ったり来たりしている。アイディアを出すために。
座っていようものなら、部長さんから叱責が飛ぶ「また、くだらない企画案でお茶を濁すつもりか!歩かんか!」
・・・
それにしても、動物園の熊、何考えてるのかな。
photo from New Old Stock