サステナブルなファッション・ビジネスは欺瞞か~パタゴニア新CEOローズ氏の挑戦
英語圏のニュースを見ていて、この2月にパタゴニアのCEOに、Rose Marcarioさんという女性が就任したということを知った。
パタゴニアは、環境保護に熱心な、サステナブルなファッションを提唱するアウトドアウェアの企業として日本でも有名である。
そのトップが変わったということで、欧米ではForbes誌、FastCompanyやGuradian誌がニュースに取り上げている。
いくつかの記事を読んでわかったことは、Roseさんは2008年にCFO(最高財務責任者)としてパタゴニアに加わり、COO(最高執行責任者)になり、そして今回、CEO(最高経営責任者)となった。
その数年の間に、パタゴニアの売上は倍になり、利益は3倍になったそうだ。
彼女は、パタゴニアに来た当初、創業者のイヴォン・チョーイナード氏がメディアなどで語る企業理念について、やや懐疑的だったと、複数の記事のインタビューに答えている。企業経営のプロとしては、株主の利益を最大にするのが経営の仕事であり、環境保護やパタゴニアの顧客や取引先の利益を最大化する経営というのは、夢物語ではないかと疑っていたようだ。
しかし、現在、環境にとってもっともダメージの少ない商品を提供するということと、企業規模の拡大は可能であるという結論に、彼女は達したようである。
彼女がいかにして、売上を倍にし、利益を3倍にしたのか、それをパタゴニアの文化・理念を保ったまま成し遂げたのか、とても興味が湧く。
いくつかの記事を読んでみたが、具体的な方法はわからない。
パタゴニア・プロビジョンというフードビジネスに参入したことは、ひとつの具体的な成果として述べられている。このサイトは日本からも見れるが、現代のフードビジネスがいかに環境にダメージを与えているか、そして、そのフードチェーンをサステナブルなものに変えるためはどうしたら良いのか、という提案がなされている。
現在のメインのアイテムは、資源量を減らさない方法で漁獲した天然のサケを使ったスモークサーモンである。
FastCompanyの記事によると、彼女は実直なシステムの見直しでそれを成し遂げたようである。彼女は記者にこのように語っている。
But the principles are the same: curiosity, being true to myself, having a point of view, working with transparency, being honest and forthright, these are the things that come with you as you evolve in your career.
しかし、原則は同じです。好奇心、自分自身に正直になること、自分の見解をはっきりと持つ、透明性をもって働き、正直にまっすぐでいること、これらが自分のキャリアを進化させるうえで必要なものです (以上引用)
パタゴニアの提唱する環境にやさしい、サステナブルなファッションやライフスタイルについて、さまざまな意見がある。
たとえば、彼ら自身が提唱する、『環境に負荷の少ない方法で作られた、必要なものだけ少数買って、それを長く使おう』というライフスタイルは、ファッションビジネスの本質と相容れない。
いわば、それは偽善であるという声もある。
僕自身も、たまにパタゴニアを買う。
高い・・・ほかの店がマークダウンしているころなら、さらに高い。
だけど、イヴォン・チョーイナード氏を紹介した本を読んでいたく感動したし、彼らのビジネスとその理念は素晴らしいと思う。
ただし、パタゴニアにやってくる前のRoseさんのように、そのビジネスがもっと大きくなって大衆に受け入れられるのか、まだ、やや懐疑的だ。
しかし、たぶん、いまの僕と同じような考えをもっていたRoseさんがパタゴニアにやってきて、その考えを変えた。
やっぱり、そこに、大きな希望はあるのではないか、と思える。
おそらく、環境に対する考え方、ひとびとの生活スタイル、企業活動は、一か八かではなく、ゆっくりと変わる。
きっと、パタゴニアの提唱するライフスタイルも、少しづつ、ひとびとを変えていくのだろう。
Roseさんに、最大のエールを贈りたい。
photo by VIKTOR HANACEK(picjumbo)