ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

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『キャリアポルノ』のつぎは『グッドニュース・ポルノ』?

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 いつだったか『キャリアポルノ』という言葉を知った。それは、いわゆる自己啓発本をさす言葉で、それらを読むばかりで賢くなった気になり、実際には何の行動も起こさず日々の生活を変えない読み方で消費される場合のことを言う。
 たしかに、そのような一面もあるだろうけど、なんだか嫌な言葉だなと思った。
 そこには叡智の詰まった本もあり、それで人生を変えたり幸運をつかんだりする人もいるはずで、それに「ポルノ」という名称をかぶせるのは、ちょっと違うよなと。
 
 最近、また新しい言葉をみつけてびっくりした。
 それは、『Good News Porn』(良いニュースポルノ)という。
 
 僕のブログのサブタイトルにも「元気が出る海外の最新トピックや・・・」といれているのだが、英語圏のニュースやサイトには、「Good News」とか「Uplifting News」(気持ちを高めさせるニュース)とか「Inspiring News」(気分を奮い立たせてくれるニュース)とか「Heartwarming News」(心温まるニュース)というような分類のされるニュースが多く、そういったニュースの専門サイトも数多くある。

 有名なところでは、Huffpostにも Good Newsというカテゴリがあるし、RedditにもUplifting Newsというページがあり、毎日毎日、そういったニュースがたくさん紹介されている。
 定番は、寄付した話、ペットや動物の救出劇、セレブの良いおこないなどで、今朝のRedditには、「バリで行方不明の日本人ダイバーの5人が救助された!」というニュースもランクインしており、現在8位だ。(日本人のこのニュースがトップ10にランクインしたのにはちょっと驚いた!)
 フェイスブックでよくまわってくるペット関係の話もRedditから火がついたケースが多い。

 さて、「Good News Porn」と言う言葉は、誰が言い出したのかわからないが、HuffPostの宗教部門の編集者Paulさんが、こんな記事を書いたことから、僕も知ることとなった。

 『キャリアポルノ』とおなじく、『良いニュース・ポルノ』は単に消費されるだけで、現状を変えないのではないか。
 しかも、『キャリアポルノ』が『読まれるだけで自分が賢くなった気になってしまう』のと同じように、『良いニュース・ポルノ』は『読むだけで満足してしまい、現実の問題解決にはかえってマイナスなのではないか』という指摘だ。
 たとえば、負傷帰還兵を家族や地域のコミュニティが創意工夫あふれたやりかたで歓迎する話をみれば、アメリカ人として誇りが満たされ兵士たちに感謝の気持ちがわく。だけど、それで終わってしまって、その背後に、帰還兵の何割かは精神的なダメージを負っていて、社会復帰に苦労しているという事実は取り残されてしまう。

 この指摘を読んで、しばらく考えこんでしまった。
 つまり、僕のブログが「元気が出る海外の最新トピックや・・・」を提供するものであれば、まさに、『良いニュース・ポルノ』を書くために、毎朝頑張っていることになる。もちろん、ポルノにだってニーズはあるが、毎朝4時に起きてポルノをつくっているつもりはない。

 さて、つらつらと考えたのだが、『消費する』という点では、そのとおりだなと思った。たとえば、「どれだけ失敗しても挫けずに頑張ることが成功をもたらす」ということを知るためには、リンカーン大統領が失敗ばかりの人生を送ったことを知れば充分なはずなのだが、僕らはいつの間にかリンカーン大統領の逸話は『消費』してしまって、その話の『効能』は薄れてしまう。
 しかし、葛西選手が長い苦闘の末に銀メダルを手にした『感動のニュース』を目の当たりにすると、また、新たな感動を得ることができて、しばらくはその『効能』が僕らの心を温めるのだ。

 つまり、『消費』してしまうから、また新たに『ニーズ』が発生する。
 『ニーズ』があるから、なんとか探し出そうとするし、下手をすると『話を盛ってしまう』ようなことがおきる。
 子供のころ、本来まったく必要でないはずのこと、玉を棒で打ち返して走るだけの運動に、いい歳の大人が夢中になる理由がわからなかったのだが、もちろん、プロ野球は、そのために、『感動の物語』を人々に提供するためにつくられた、とっても大きなフィクションにもとづく実世界だ。
 
 さて、『良いニュース・ポルノ』も『キャリアポルノ』も、それを受け取った人が、それを現実世界の行動に移せるのか、なんらかの良い影響を現実の世界に与えることができるのかという点が問題になる。
 
 で、結局のところ、僕は、肯定派だ。
 ほかの人の心の中の変化や、どれだけ行動が変わったかなんてことは、僕には知りようがない。
 だけど、少なくとも、僕のココロにはエネルギーが注入されているように感じるし、ちょっと気分が折れかけた時などは、そのせいで頑張ろうという気になれたりする。
 それは、ほんのちょっとかもしれないけど、笑顔を多くするかもしれないし、そのせいで、話が弾んで、辛い毎日を生きている誰かが、ちょっとほっこりできるかもしれない。

 耳をそばだてなくても、辛いニュース、嫌なニュース、不幸は一杯雪崩れ込んでくる。もちろん、それを知る必要があり、それをこそ認識して、アクションを起こすことでしか、社会も人生もより良くすることはできないだろう。
 だけど、人間は感情で生きている。問題に立ち向かうにはココロの奥に、『火』が必要だ。
 小さな『火』を灯す、その『火』を別のひとに渡していく。
 それだって、絶対に必要なはずだ。

 僕はそれを、『Good News Porn』(良いニュースポルノ)とは呼びたくない。
 
 日本にも、そういうメディアができるといいな!

 

 
*話とは関係ないんですが、未見の人はきっと感動しますよ!

photo by Tina :0)