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ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

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フィッツジェラルドの初恋、僕の初恋、そしてあなたの初恋は?

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   この世でもっとも聞きたくない話のひとつに、おやじ、もしくは自分の父親の初恋話というのがある。
 浜田省吾の大好きな曲に『初恋』というのがあって、それは少年時代の彼がいかにロックを愛するようになったかという歌なんだけど、家族でカラオケにいったときに僕がそれを歌ったら、長女が「こんな恥ずかしい曲聞いたことない」みたいな顔をした。
 対象がロックであってもそうなので、相手が生身の人間の「初恋」の話だったらどういう反応を示すのか、怖いものがある。

 今朝も海外のニュースを渉猟していたのだが、向こうではバレンタイン当日ということで、Loveに関する話題が多く、ほとんど全部スルーしたのだが、「初恋」という言葉がおやじの心にちょっとひっかかった。
 
 僕もたしかに初恋をしたはずだ。
 いや、知らぬふりはやめよう。たしかに、小学校高学年のとき、Xさんが好きだったのだ。
 彼女はスポーツ万能、勉強もでき、やさしく活発な女の子で、笑顔も可愛かった。
 クラスで断トツの人気で、学級委員とかを選ぶときは真っ先に名前が挙がったし、おそらく、いや、確実に、クラスの男子の4分の3は彼女のことが好きだったはずだ。
 20人以上の男ども、現在はおやじとなった男どもの初恋の人として、その胸に刻まれているに違いない。
 
 いまの時代はどうだか知らないが、小学校6年のときのことだし、誰と誰が付き合っているとか、誰と誰は相思相愛だなどという話にはならなかった。だから、彼女が誰を好きだったのかは不明だ(僕でないことだけはたしかだ)。
 そもそも、彼女が誰かに好意を抱いていたかどうかはわからないが、もしそういう気持ちがあったとしたら、たぶん、あいつだなと思われる人気者の男子もいた。

 ところで、その時の気持ちってどんなだったんだろうか。これを書くために一生懸命思い出そうとしてみるが、たしかに感じたはずの胸のときめきも、いまではまるっきり思いだすことができない。彼女と少しでも話がしたくて意地悪をしたような気もするが、「彼女を好きだった」という事実を覚えているだけで、ひとつのエピソードも思い出せない。
 だがしかし、その気持ちは、純粋で、なんの打算も計算も、薄汚い欲望にもまみれていないものだったに違いない。

 
 あのころ、日記に思うがままを書いていたら、いまごろ楽しめただろうなと思う。
 僕の日記はもちろん存在しないが、子供のころの日記がちゃんと保管されていて、誰をどんなふうに好きだったかをちゃんと記録している人がいた。

 『華麗なるギャツビー』で有名なF・スコット・フィッツジェラルドは、14歳になる直前の夏(1910年)、半年間にわたってノートをつけており、そこに様々な人間観察の結果や自分のことが記されていた。そのノートは家族が大切に保管しており、長い間、公式の伝記作者のみ閲覧を許されていたのだが、去年、『The Thoughtbook of F. Scott Fitzgerald: A Secret Boyhood Diary』という本にまとめられて、幼少期の写真とともに出版された。(邦訳はまだのようだ)

The Thoughtbook of F. Scott Fitzgerald: A Secret Boyhood Diary (Fesler-Lampert Minnesota Heritage)

The Thoughtbook of F. Scott Fitzgerald: A Secret Boyhood Diary (Fesler-Lampert Minnesota Heritage)

 

 

 この本を紹介した記事フィッツジェラルドの少年時代の恋、初恋に関する部分があって、とても面白かった。

 フィッツジェラルドは14歳、中学2年のころから、すでに女の子にもてる男になろうと決意していたようで、さまざまな女の子に関する詳細な記述がみられる。
 
 彼の初恋は9歳の時。Nancyという8歳の女の子で、庭師の家で出会い、そりで遊び、お互いに夢中だったという。しかし、13歳でそれを書いたフィッツジェラルドも、当時は小学校4年生ぐらいだったはずで、さすがに記憶はあいまいだと書いている。
 
 つぎに登場する女の子はKittyちゃん。ダンススクールで出会った。最初は、彼はダンスのパートナーとして、彼女が選んだ三番目の候補だった。だが、11歳のときには、自分の気持ちを告白して相思相愛になっている。

Kittyが好きだ。 
今日、ダンススクールで告白した。
 
友達のEarlに、「Kitty、君を愛している」と思い切って告白すると言って、そうした。
彼女は僕にダンススクールが好きかと訊ねたので、君が来ているなら好きだと答えた。そして、彼女も、僕が来ているから好きなのと言った。


 彼のこのノートの面白いところは、時々に、自分のなかで好きだと思う女の子の順位を書いているところだ。そして、本人も14歳にして、その順位はそのときどきでは真実だけど、時と共に変化していくと書いている。

 その1911年の順位は、

1. Kitty Schultze

2. Alida Bigelow

3. Elenor Alair

4. Marie Hersey

   だったのだが、1912年度の順位がこのように変わるのではないかと、自身で予想している。

1. Elenor Alair

2.Kitty Schultz

3.Marie Hersey


 しかし、実際は、1911年の2月にこうも書いている。

 最後のダンススクールで、Alidaはやめることにした。ふたりの子に夢中なんだ。Margaret とMarie。どっちがベストかまだ決められない。後者は一番かわいいけど、前者が一番話が面白い。

  
 結局、彼はMargertを選ぶ。彼女はたいして可愛くないけど、とっても魅力的な外見をしていて、優雅で、ダンスが上手くて、いままでに出会ったなかで、いちばんの話上手だそうだ。
 
 もちろん、彼もたいそうもてたようで、こんな自慢もしている。
 

ダンススクールで去年もらったバレンタインチョコは11個。今年は15個ゲットした!

 
 彼は結局、Margaretと相思相愛になるのだけれど、そのMargaretがもうひとりの男子とどちらを選ぶか迷っており、自分の先をカップルで歩くそのふたりに嫉妬する様子なども書かれており、とても面白かった。

 まあ、しかし、僕はあのころの日記を残しておかなくて、やっぱり良かったんじゃないか、と思った。
 子供のころは、ただただまっすぐに、誰かを好きになっていたような気がしていたのだが、フィッツジェラルドの子供時代の話は、やや生臭い感じがする。
 
   初恋はリアルに描き残すものではなくて、忘却とともに、淡い色で勝手に描き足していくものなのかもしれない。
 

 あなたの初恋は、どんな風でしたか?

 

photo by Cliff