ひとは先天的に起業家として生まれるのか、起業家になることを後天的に学ぶのか?
ちょっと前の記事に、”「ふつうのおばちゃん」たちが、よっぽど活き活きと古着屋をされているのを見ると、なんだか違うんじゃないか、誰でもとは言わないが、多くのひとが、ひとそれぞれに、それぞれの方法で、自分が生きていくぐらいは稼ぐ能力があるんじゃないだろうか、と思ったりする”と書いて、でもその確信はないと続けた。
しかし、今朝、こんなことを言い切っているかたがおられるのをみつけた。
すべての人間は生まれながらの起業家である。だが、不幸にも、我々の多くはその能力を発揮する機会を持たず、隠れたままになっているのだ。
"All human beings are born as entrepreneurs. But unfortunately, many of us never had the opportunity to unwrap that part of our life, so it remains hidden.”
これを言っておられるのは、写真のブランソンさんではなく、ノーベル平和賞を授与されたマイクロクレジットの創始者のムハマド・ユヌス氏だ。ブランソン氏がブログでその言葉を紹介されていて、僕もはじめて知った。
僕のような一介の古着屋の言葉ではなく、何万人、何十万人という人たちをマイクロクレジットを通じて自立させたユヌス氏の言葉だから、比べようもなく重い。
そして、たとえばこの記事によれば、起業・自営・フリーランスという働き方は、欧米ではさらに重視されつつあるという。
30%のイギリスの若者は将来自営できると考えており、25%は今後5年以内に自分がビジネスオーナーになれると信じている。(略)43%はすでになにがしかのお金を自分で稼いだことがある。
また、こちらの記事にはこんなことも書いてある。
300人近くの14歳から16歳のイギリスの中学生に訊ねたところ、70%はすでに職業を決めており、その4分の1は自分で仕事を始めるつもりと回答した。
イギリスをはじめ欧米でも、若年層の失業が問題となっており、そのことへの自衛手段としてそう考えざるをえないということもあるのだろう。
しかし、会社の寿命が短くなっている今、自分の食い扶持を自分で稼ぐということが、ひとつの解決になっていることは、先進国の共通の状況なのかなと思う。
さて、ユヌス氏の言葉は真実だろうか。
そういわれてみてば、たしかに、人間は昔から自分の食い扶持は自分で稼いできたはずだ。たとえば、江戸時代の日本では、80%以上の人たちが農業もしくは商売をするなり何かをつくるなりして生きていた。そして、その人たちはいわば、自営業者であり、フリーランスだったのではないだろうか。
そう考えると、たしかにユヌス氏のいうとおり、人間にはそのDNAが備わっているとも言えそうだ。
それを破壊してしまったのが産業革命だが、いま起きているIT革命が、個人の自立をより容易な方向に社会を発展させていると思うと、嬉しい。
しかし、ユヌス氏がそうおっしゃったとしても、今の日本じゃ、到底、独立や自営・フリーランスを安易にすすめることはできない。
多くのひとが失敗していることは、みんなよくわかっている。
その最大の原因はみんなが「見栄」にとらわれ過ぎていることだと思うが、ほかにも銀行の融資の姿勢をはじめ、さまざまな問題があるだろう。
この記事は誤解されたようだが(ホリエモンさんにあほ!と言われた。光栄?)、僕は「起業なんて怖いからやめておこう」と主張しているわけではなく、リスクがとれる人はリスクをとってやればいいと思うし、リスクをとれないひとはリスクを最小にして始める方法もある。
イギリスの例をひきあいにだすまでもなく、これからの社会は、若い人も中高年も育児で会社を辞めざるをえなかった女性たちも、ひとりでも多くのひとが、自分のビジネスを持ち、自分の足で立つことが望まれている。そのほうが、社会全体の幸せの総和は間違いなく増えるからだ。
僕は思う。
今の日本にこそ、ユヌス氏の言葉を信じて、それを阻んでいるものは何かを、みんなで考えていくべきなのではないか、と。
photo by Kris Krug