ICHIROYAのブログ

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「仕事を通じて成長なんてしなくていい - 脱社畜ブログ」を読んだ

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ユニクロの柳井さんが、「人間は、仕事以外で成長する方法はないんですから」とインタビューで語ったらしく、当然ながら、反論があがっている。

あたりまえだ。
企業に勤めたことはなくても、素晴らしく洞察力に富んだおばあちゃんもいる。
仕事だけでなく、病気、子供のこと、介護など、さまざまな問題や解決すべき事柄が降りかかってきて、人間は磨かれる。
仕事以外でも、成長する方法は、あるに決まっている。

そして、たとえば、この記事が、賛否を集めながら多く読まれているようだ。

仕事を通じて成長なんてしなくていい - 脱社畜ブログ


この記事では、「仕事で成長するってことは、運に左右されるし、能率が悪い。仕事に成長を求めるな」とアドバイスされている。
たしかに、「成長」という言葉には、一種、魔力のようなものがあり、「人間は成長すべき」→「成長のためには、どんな苦労もすべき」となり、ひどい労働条件・環境を正当化するためにも使われる。
おそらく、この記事がこれほど多くの共感を集めるということは、多くのひとが、「成長」という言葉のもとに、理不尽、もしくは、本人にとっては理不尽と思える仕事を強いられているのだろう。

こういった記事は、そういった立場にある若者に勇気を与えるし、また、安易に「成長」という言葉を連発する経営者にも、気づきを与える場合もあり、有用なものだと思う。

だけど、いつも、この手の記事を読むと、一抹の不安を感じる。
何かというと、僕も若い頃、そういった考えに共感し、心情的に組織に背を向けたり、目の前の仕事に魂をこめなかったりしたことがあるのだ。
振り返ってみて、僕は、そのために、ずいぶん損をした、と思うのだ。
だから、ただ、反論したいというわけでなく、「たしかにそういう面もあるけれど、すべてのひとがそういう状況におかれているわけでもない。せっかく、仕事に一日の大半の時間を使っているのだから、それを成長のチャンスにしないのは、やっぱり、もったいないぜ」と言いたくなるのだ。


ところで、上記のブログに

「「成長というのは、そういった細かなスキルの向上のことではなくて、人間的な成長のことを言っているんだ」という反論する人がいるかもしれない。僕はこういった「人間的な成長」のような、定義がよくわからないものに対する議論はあんまり意味がないと思う」 (以上引用)

というところがあり、おお、そういえば、若いころの僕も、ちょうど、そんな風に思っていたなと、とても懐かしい気持ちになった。
大人たちが言う、「仕事を通じて得られる人間的な成長」って、いったい、なに?
せいぜい、ゴマをするのがうまくなる、とか、その程度のことじゃないのか、と思っていた。
で、さすがに、歳もとったので、なんとなく、「仕事を通じて得られる人間的な成長」がなにか、ぼんやり理解できるようにはなったのだけど、それを、もっと、具体的なスキルとして説明する方法はないのかな、と思った。
「人間的な成長」をしているのであれば、具体的に、以前はできなかった現象が、以降はできるようになっていなければならない。
それはいったい、何かな、と思い、書いてみることにした。
もちろん、それらは、「僕ができるようになったリスト」ではなくて、たいていのものは、僕が見たできる上司たちや仲間たちが、上手にやっていることだ。


1.人前で上手に話すスキル

企業に勤めていると、人前で話すチャンスが多い。
ちょっとしたマネージャーになると、毎日朝会をしたりしなくてはならないし、歓送迎会などでのスピーチ、大勢のお客様を前にした説明会など、多くの機会に恵まれる。
生まれつき、上手なひともいるけれど、大半のひとは、慣れだと思う。

2.会議を仕切るスキル

十人以上の会議を仕切るのは、ほんとうに、難しい。
充分な発言を得て、発言者の面子を保ったまま、一定の方向性を出して、会議を締める。
出席者側からみると、意味のない会議に長々付き合わされたと思うことが多いのだけど、ちゃんとした会議は、案外、落ちるべきところに落ちている。
それは、自分で仕切ってみると、その難しさがはじめてわかるのだけど、会議を仕切るという、特別のスキルがあるのだ。
たぶん、それは、場数を踏まなければ、習得できないスキルだ。


3.人間に対する洞察力

いろんなひとに、モノを買ってもらったり、して欲しい仕事をしてもらわなければならない。たいてい、こちらが望んだとおりにしてはくれないので、それをしてもらうためには、どうすればいいのか、何を提供して、どう話せばいいのか、真剣に考えるようになる。
また、誰と組めばいいのか、誰はできて、誰はできないのか、能力考課はどうつければいいのか、など、ぎりぎりまで考えなければならない場合も頻発する。
そのため、いろんな動機に動かされている人間に対する洞察力、あるいは、個人の能力に関する推理能力などが、磨かれる。


4.嫌われることをいとわないスキル

組織のなかで仕事をしていると、みんなにいい顔ができるわけではない。
頼まれごとも、場合によっては後回しにして、ぶっち、しないといけない場合もある。
たぶん、上に行けばいくほど、頼まれごとを放置したり、誰かの望まないことを、平気でやらなければならないことが、加速度的に増えていく。
それに平然としていられるのは、やっぱり、スキルのひとつだと思う。


5.複雑な状況を理解する能力

いつも、企業のおかれた状況、自部門のおかれた状況は、複雑だ。
まったく、複雑極まりなく、いろんな環境や関連部署、経済変化、競合の変化などに巻き込まれている。
そのスキルの低いうちは、自分の直近のことしか見えないし、直前に知った印象的な事柄を大きく捕らえすぎたりする。
このスキルの高いひとたちは、ある程度は直感的に、その状況を正確に理解して、対応策を考える。


なるべく、抽象的にならないようにと思っていくつか書いてみたが、仕事を通じて磨かれる「人間的な成長」というのは、もっとたくさんの、具体的なスキルになって現れると思う。


先のブログは、このように締められている。

「そもそも、成長自体そこまで意味があるものではない。大事なのは成長の結果何をやるかだし、仮に何もしなかったとしても、毎日楽しく生きていれば特に問題はないはずだ。」


たしかに、「成長」は目的じゃない。
だけど、「成長」すれば、「何をやる」にしても、得られる結果は大きくなる。
もちろん、「仮に何もしなかったとしても、毎日楽しく生きていれば特に問題はない」。
「あなた」ではない、誰かが、この問題だらけの世界を、なんとか、しようと、がんばっているだけの話だ。
何も、「あなた」が、がんばる、必要はない。
ほんとうだ。
だって、生きる、ってことは、それだけで、たいへんなことだ。
無理する必要はないのだ。

でも、やっぱり、「あなた」にそれができるなら、できそうな気がするなら、「あなた」にも、がんばって欲しいなと、ちょっと思うのだ。
強要はしないけど・・・