ICHIROYAのブログ

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満ち潮に乗るか、引き潮で踏ん張るか、それが問題だ

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by OpenEye


満ち潮に乗るか、引き潮のなかで踏ん張るか、それが問題だ。

アンティーク着物、リサイクル着物の業界の若いひとたちと話をしていると、いつも、将来どうなるかな、という話になる。
僕はもう歳だし、子供たちも成人し、欲も薄れて、この引き潮の中に留まってもどうということはない。
でも、若いひとは、まだ何十年も食っていかねばならず、新たな満ち潮を探して乗るのか、引き潮のなかで独自の戦いを見つけ出して踏ん張るのか、常々考えているようだ。


要は、ニッポンジンは、興味がなんだもの。
着物とか、ワビ・サビとか、伝統文化とか。
風流を好む気持ちは、ここ30年で絶滅したね。
なすがまま、滅びるものは、滅びたらいいんだよ。


と、尊敬する大先輩は仰る。
大きな引き潮のなかで戦っても、大勢は変わらないと。


だって、と大先輩は、続ける。

ほら、盆栽とか、もう、絶滅寸前でしょ。
逆に海外じゃ人気になっているけど、盆栽を楽しむひとなんて、ほとんどいない。
ちょっと前まで、「石」と楽しむ文化だってあったんだ。
拾ってきた「石」を、見せ合って、この色がいい、このカタチがいい、と楽しむ余裕があったんだ。
それも、絶滅したろ、と。


そういえば、僕が子供のころ、ご近所さんには、盆栽を並べておられる家がたくさんあった。
大きな家でなくても、玄関脇の小さなスペースに盆栽を並べている家も多かった。
とおりでボールを投げたり走り回っていりしているときに、そいつをひっくり返したりしないかと、びくびくしていた覚えがある。


「石」のほうは、盆栽よりさらに高尚な趣味のようで、実体験としては何も知らないけれど、「水石(すいせき)」といって、盆栽と同じように、山水景を感じさせる自然石を室内で鑑賞する趣味のようだ。


ちょうど、僕が子供のころ、そういった趣味を楽しんでいたオヤジの世代に、僕自身がなってしまったが、「石」の楽しみは知らないし、何年もかけて、鉢の樹木を、狙った形に変えていくような、心の余裕がない。


たしかに、そういう心は、僕自身を省みても、薄れている、というか失われてしまったような気がする。
僕のオヤジはけっして趣味人ではなく、盆栽も石も知らなかったけれど、筆をとったり、正月には着物を着たりしていた。
たまたま僕はこんな業界にいるからたまには着物も着るけど、そうでなければ、若いころの浴衣以外には、着物を着ることもなく人生を終えていたかもしれない。
悲しいかな、間違いなく、オヤジよりも、そういう風流を楽しむ心は、薄れている。


そして、そういう気持ちは、日本では急速に失われているけど、海外では逆に評価されて、盆栽も、そして、水石も、人気が出ている。
このページに貼った写真の盆栽や水石は、すべて海外の方がつくったものだし、下の写真は、スペインで行われた盆栽・水石の展示会のもののようだ。


引き潮なら、その場に留まれば、やがて、孤立して死んでしまうかもしれない。
潮の流れには、逆らえない。
しかし、ほんとうに、潮なのであれば、また満ちてくる。
いつかは。


満ち潮に乗るか、引き潮で踏ん張るか。
それが問題だ。


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by ragesoss




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By Daniel Rocal

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By Daniel Rocal