ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


こんなアール・ヌーヴォー銘仙見たことない! ( やり過ぎてこそ浮かばれる )




なにごとも、やり過ぎはいけない、と思って生きてきた。
しかし、間違えていた。
世間というものは、やり過ぎてこそ、浮かばれる、というものであることに、最近気づいた。

たとえば、この着物である。
戦前、大正ごろの銘仙であるが、なんでこんな、大きな柿の柄なのか、まったく意味が不明である。
これが、リンゴとか、イチゴとか、ブドウとか、百歩譲って、キュウリなら、納得がいく。
世はアール・ヌーヴォーの時代であった。
アール・ヌーヴォー・テキな」柄の着物をつくるべく、デザイナーは知恵を絞ったのであろう。
黒地に、赤の大胆な配色で、デザインのタッチには、洋画(油絵)のようなタッチを取り入れて。
そして、なぜだか、モチーフは、柿。


そもそも、柿というのは、あくまで日本的なものである。
このあたりでも、ちょっと田舎へ行くと、古い家の庭には柿が植えられていて、秋には蔵の白壁に柿の実が映える光景が見られる。
もともと、中国原産であるが、「甘柿」は日本の固有種なのだ。
Wikiを読んではじめて知ったのだが、柿は大陸からやってきたとき、もともとすべて渋柿だったのに、1214年川崎市の王禅寺というお寺で、突然変異で偶然できた「甘い柿」が発見されて、全国に広まったと言われている。


この日本の誇るべきフルーツ、柿。
英語でも柿は、"kaki"
干せば保存食となり、幹は家具材として使われ、葉も茶のかわりとして飲まれることもある。
そして、渋柿を発酵して得られる柿渋は、古来、防腐剤として活躍してきた。
また、干し柿はカロチノイドを多く含み、そのカロチノイドは、最近の研究では、人を楽天的にする効果があるという。


*1000人を対象にした、ハーバード大の研究で、楽天的なひとはそうでないひとより、カロチノイドの血中濃度が13%高かった


そうか!お正月になんだか幸せな気分になるのは、干し柿をたらふく食べるせいだったのか!
素晴らしい!
乾坤一擲の着物のデザインに、柿をモチーフに選ぶことに、なんら異論はない。
が、しかし、なんどこの着物を見ても、曰く言い難い、違和感が残る。
いったい、この着物は、オシャレなのか?
こんなに巨大な柿がブリブリと描かれた着物を着て、みんながステキ!と言ってくれるのか?


しかし、と思うのだ。
簡単には飲み込めない、このやり過ぎ感こそ、大事なのだと。
お笑い芸人しかり、ブログしかり、アートしかり、ビジネスしかり、なんでもしかりである。
まず、目立って、多くのひとに知ってもらい、好悪どちらでも、とにかく多くの衆目を集めることが、肝心なのである。


なんでこんなこと、馬鹿なことを書いてるんだろ?
たぶん、船橋市非公認ゆるキャラ「ふなっしー」のテレビ出演を見て、「飲み込めないやり過ぎ感」にいたく感動したからだ、と思う。
富田林のキャラクター「とっぴー」は、いつまでたっても浮かばれない。
が、「ふなっしー」はブレイクする。


この「やり過ぎた、柿のアール・ヌーヴォー銘仙」も、後世に残るだろう。
そう、やり過ぎてこそ、浮かばれるのである。
それが世間というものだ。