リアル過ぎる昆虫モチーフの大正期の着物の逸品から学ぶこと
大正期の素晴らしい逸品をゲットした!
生地は流水模様を織り込んだ薄物で、芝に昆虫の模様が、全面に施されている。
そのリアルなこと!
蝶の羽根からは鱗粉がハラハラ落ちてきそうだし、バッタたちも今にも跳ねそうだ。
アカトンボやホタルも光りながら舞っている。
なにやら、名前も忘れてしまった、リアルな昆虫もいる。
その緻密なデザインは、さながら、昆虫図鑑のようだ。
大正期の着物には、こんなリアルな昆虫模様のものがときどきある。
が、この着物がとくに秀逸だと思うのは、よく見ると、蝶やトンボや蛍の舞う、一見平和そうなこの草むらの一角に、大きな蜘蛛の巣がかかっていることだ。
左前と、右肩には蜘蛛の巣が張られており、大きな蜘蛛が、その真中で、獲物を待っているのである。
まるで、現実社会そのものではないか。
我が世の春とばかりに、ひらひら舞っている美しい蝶にも、矢のように飛ぶトンボにも、暗闇にほんの短時間だけ命を燃やす蛍にも、緑の草に我が身を隠して息を潜めるバッタたちにも、等しく、蜘蛛の巣が待ち構えているのだ。
もちろん、蜘蛛は悪党とは限らない。
慢心や私利私欲に足を大きくすくわれるときもある。
みなさん、くれぐれも、ご用心あれ!