僕が手に入れた生涯最高の逸品! やっぱり、スキーだ!
僕の若かりし頃の、冬は、映画「私をスキーに連れていって」の世界。
「ロッジで待つクリスマス」を聴きながら、慣れたスノータイヤの運転でスキー場へ行き、ゲレンデで愛を育み、キャンドルの灯りで見つめ合って・・・
な、はずない。
冬が来るたびに激しい焦燥感とともに、そうあるべきと、夢想していたのだ。
アイスホッケー部に所属していた僕の冬は、アイスホッケーのシーズンであった。
しかも、アイスホッケーにすべてをつぎ込んでいた貧乏な僕には、スキーにかける金もない。
「私をスキーに連れてって」が描く状況は、周囲の若者たちみんなが楽しんでいるごくありふれた青春の一コマらしいのだが、僕にとっては、夢のまた夢の物語であった。
4年間のホッケー漬けの生活を終えたあと、やっと大学生らしい1年間が訪れた。
スキーとスケートの基礎技術には、ある程度共通の技術があり、スキー場へ訪れてみると、それなりに滑れた。
そして、スキーの爽快感も大好きになった。
なぜか、映画のようなロマンスはおとずれなかったのだが。
ところで、スキー人気の凋落が激しいという。
たしかに、うちの家族も、十数年、スキーに行っていない。
娘たちは、仲間とスノーボードをしに行っていたようだが、スキーにはまったく興味はないようだ。
どうやら、あの映画のあと、爆発的なスキーブームがおき、バブル期の狂乱とあいまって頂点に達し、それがいまでは、バブル期以前の状態に戻った、ということらしい。
たしかに、スキーに行くとなると、お金がかかる。
時間もかかる。
レンタルスキーがあの状態なので、器具も自前を用意しようとすると、めんどくささに輪がかかる。
雪道の運転も心配だ。
いまでは、世界中で、スキーは高齢者の遊びだと、言われているようなので、僕もがんばらねばならないのだが、どうも、めんどくささが先にたってしまう。
北海道の雪は、世界でも例をみないスキーに最高のパウダースノーだとして、世界中のスキーヤーの垂涎の的となっているというのに。
と、スキーに対する愛情が枯れかけている僕であるが、その愛情が再び燃え上がるような逸品と出会ってしまったのである。
写真の名古屋帯だ。
なんて楽しそうにスキーをしてるんだ?!
赤のボーダーのセーターを着て、脚絆のようなものを足に巻き、眼鏡もなしに、さっそうとマフラーをなびかせている。
いったい、いつの時代のスキーヤーだろうか。
スキーが日本で始まったのは明治末期。
大正には、信州などで広まり、スキー場が建設された。
初めてのリフトができてたのは、戦後である。
どうやら、その姿は、昭和初期、戦前のものではないか、と思うのである。
細部を見てみる。
すべてが、刺繍で描かれている。
白の地に、白い糸で、雪が飛び散るところがリアルに縫われている。
白地に白で雪を縫い、雪の合間にスキーヤーをおくというデザイン、縫いの企てが、とてつもなく秀逸だ、と思う。
それが、躍動的なスキーヤーの姿に、スピード感と歓喜の表情を与えているのだ。
きっと、この縫いをしたひとは、スキーに対する深い愛情や憧れをもっていたのだろう。
そんな時代にしか、このデザイン、刺繍を生み出すことはできない、と思う。
久々に、惚れてしまうやないか!
また、スキーがしたくなってしまうやないか!
ちなみに、この名古屋帯、キモノハイスタイルで販売します。
18万円です。
高いです。
だって、惚れてしまったんですもん!
では、その素晴らしいデザイン、縫いの細部を、写真で、お楽しみあれ!