やめるにやめれぬ体育会と原発?
大学に入ったばかりのころ、体育会や同好会の勧誘合戦の熱気にほだされて、ついふらふらとアイスホッケー部の入部説明会をやっている教室に入ってしまった。
たぶん、あのとき、あの教室に入っていなければ、いまごろ僕の人生は、栄華栄達に向かって一直線に上昇するものであったろう。
スケートなんてできない。
でも、アイスホッケー部の部員は、みんなゼロからスタートしたという。
アメリカンフットボールのようなカッコいい防具を着て、しかも、レギュラーになれるって?
どうせ、京大ギャングスターズ(アメリカンフットボール部)は、僕など歯牙にもかけない。
僕は、氷上のトラとなる決意をした。
もちろん、練習はキツイ。
練習があるというだけで、朝からキブンがどんより暗く、逃げ出したくなる。
時間が不規則だ。
練習は、夜から深夜にかけて。帰ってくるのは、午前様。
お金もかかる。
リンクの貸切代、スケーティングの費用、防具代。
スティックをバキッとやってしまったら、一瞬で、数千円。
貧乏学生にとっては相当な負担だ。がんばってアルバイトするしかない。
結局、昼はバイト、夜は練習で、どんどん、授業からは遠ざかり、アイスホッケーを続けるためだけの毎日となってしまった。
水産学、海洋学を学ぶために、つらい受験を乗り越えて大学に入ったのに、このままでは、ホッケーだけで大学生活が終わってしまう。
やめたい。
文系なら体育会のクラブをやりぬいたということは、いくらか就職に有利になろう。
しかし、僕は理系、農学部水産学科である。
真面目に考えたら、やっぱり、学業にこそ、この4年間をかけるべきだ。
やめよう。
ついに、ある日、練習に行かなかった。
下宿の4畳半でぼんやりしていると、深夜、案の定、先輩と僕とおなじ1回生の連中が大勢やってきた。
まあ、まあ、やめるなんて言うなよ。
おれたちも、お前とおんなじで、やめたいと思うことも多いんだ。
でも、いったん始めたことだし、いまやめたら、後悔するよ。
4年間、続けたら、絶対にいいことあるって。
勉強も、クラブもがんばればいいじゃん。
だいたい、勉強だけの大学生活なんて、つまんないじゃないか。
いっしょに、がんばろうぜ。
うん、そうだな!
やめるの、やめる!
で、結局、アイスホッケーを4年やり、大学には5年行って、女の子が多いという理由で志望した百貨店にひろってもらうことになったのである。
「30年代に原発をゼロにする」と決めた野田首相を取り巻く現状を見ていると、なぜかまざまざと、あのときのことを思い出すのだ。
ま、野田首相は、僕のように意志薄弱じゃないから、心配する必要はないとは思うけど・・・