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ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

★★★当ブログはじつはリサイクル/アンティーク着物屋のブログです。記事をお楽しみいただけましたら最高。いつか、着物が必要になった時に思い出していただければ、なお喜びます!お店はこちらになります。★★★


草履とジャズの深い関係(澤野工房さんのこと)

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草履とジャズには深い関係がある。
草履って、そう、その言葉どおり、着物を着たときにはく、草履のことである。

海外のお客様に、大阪の魅力を伝えようとして、カメラをぶら下げて、大阪天王寺の通天閣、新世界界隈を歩いていた。

3,4年前のことだ。
久しぶりに歩く新世界は、いつの間にか観光地っぽくにぎやかになっていて、「二度漬け禁止」などという串カツ屋の台詞が、でかでかと宣伝看板に書いてあり、ちょっと、鼻白んだ。
でも、やっぱり、独特のレトロな雰囲気が残っていて、楽しい町だ。

通天閣から商店街を抜け駅に向かっていたとき、草履屋さんが目についた。
職業柄、ショーウィンドウに飾ってある着物の草履に興味が湧き、近寄ってみようとしたら、ショーウィンドウの上にかけられた看板に気がついた。

澤野工房」と書いてある。

え?
ここが、あの、澤野工房なの?

草履の飾られた店先を回り込むと、奥にはCDが並べられているのが見えた。
きっと、世界中でここにしかない。
草履とCDを同時に売っている店。

店の中に入ってみた。

店には、お客さんがひとり、おじさんがひとり。

並んでいるCDは、まさしく、澤野工房さんのCDだった。


ジャズファンなら誰もが知る澤野工房さん。
澤野工房さんのHPから、自身の紹介文を引用させていただく。

「ここは大阪、新世界。私共は通天閣のお膝元のこの地から、数多くのジャズ作品を世に送り出している小さなジャズ・レーベルです。「自分が聴きたい作品をリリースする」という言葉をモットーに、ヨーロッパを始めアメリカ、日本のモダン・ジャズの中から優れた音源のみを厳選し、皆様にお届けするべく日々奔走しています。」(以上引用)


 会社勤めをしていたころ、ジャズにどっぷりはまっていて、よくタワーレコードのジャズコーナーに通っていた。
そこに、「澤野工房」というレーベルの小さなコーナーがあり、手作り感のある、ヨーロッパのジャズのCDがいくつか置いてあった。
すでに退潮著しいジャズの分野で、こんな小さなレーベルを立ち上げて、商売になるのか。
ちょうど、毎日、毎日、会社を辞めたいと思い、辞めるとすれば、何をするべきか悩んでいたころである。
好きが高じて立ち上げられたらしいそのレーベルに、熱いものを感じた。

2,3枚買って帰って、知らないアーティストたちの音を聴いてみる。
そして、納得した。
大手のレーベルが売り出しているアーティスト以外に、素晴らしいアーティスト、音がある。 
誰かが、そんな音源をヨーロッパまで捜しに行き、なるべくお金をかけずにCDにして、こうして、タワーレコードのバイヤーさんに売り込んで、小さいとはいえ、ひとつのコーナーをもらって、一般のジャズファンに、好きな音楽をお届けしている。
なんというチカラ技か!

僕にも、それだけの、チカラがあればなあ。 
澤野工房さんは、当時の僕の、夢のひとつの理想形になった。

その後、僕は会社を辞め、今の仕事を始めた。
いつの間にか、ときどき訪れるCDショップでの、澤野工房さんのコーナーは大きくなり、いっぽう、僕のジャズ熱は、心の芯を震撼させるような音との出会いが減り、少し冷めてきていた。


そして、CDとの出会いから10年近く経って、偶然たどり着いた澤野工房さんは、なんと草履屋さんであった。
その場にいて、CDの接客をしていたおじさんは、澤野社長本人だった。

嬉しくて舞い上がっている僕に、澤野社長は、とてもやさしく接してくれた。
気鋭のジャズレーベルの社長というより、草履屋の主人の腰の低さで。

「昔から、澤野さんは、僕の憧れのひとだったんです!」と僕。
「でも、ここで、こうして、草履屋さんをやっておられた、なんて知りませんでした」
「ははは、そうでしょう。いや、いや、苦しいとき、ほんとうに、この草履たちには助けてもらいました」とニコニコしながら澤野社長。

まったく知らなかった。
澤野工房さんが発掘してきた音源、アーティストたちは、草履、つまり、和装のビジネスが陰で支えてきたのだ。
 偶然、自分も和装ビジネスの一端で食べさせてもらっている。
不思議な、嬉しい、嬉しい縁である。


僕は、澤野社長に数枚のお勧めCDを選んでもらった。

「どんなオトがお好みですか?」
「えっと、誰でもいいです。楽器もなんでもいいですけど、甘すぎないのが、いいです」
「甘すぎないのかあ・・・うちのは、結構、甘い系ですからねえ、ふふふ」
澤野社長自ら袋に入れてくださり、お願いしたら、社長と一緒に写真も1枚撮らせてもらった。

澤野社長!
あのときは、ほんとうにありがとうございました。
実は、僕も、着物たちに食べさせてもらいながら、いま、こうして、何かをしようとあがいています。
澤野社長目指して、あきらめず、がんばります! 

 

(写真は 歌うワラビの柄の名古屋帯 )