ICHIROYAのブログ

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辺境に咲く花~腐ってもニッポン!

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いま、たしかに、日本は腐っている。
既得権益にしがみつく人たちで、がっちがちである。

しかし、やっぱり、ニッポンって、凄い、と思うのだ。

たとえば、粋な縞の江戸小紋
単純な縞模様なんだけど、それを染める型紙を切ってつくるには、何年もの修行がいる。
しかも、細ければ細いほど粋である、という日本人ならではの美意識に応えて、「玉縞」と呼ばれる
万筋の最高峰では、3cmに26本もの細い筋が染められる。
この型紙を切るためには、じつに、1cmに12本の筋を切り抜く必要がある。
筋を切り抜くためには、両端を切らなければならないので、つまり、1cmに、まっすぐに24本の直線を、正確に等間隔で切る、必要がある。

1mmに2.4本である!

とても、信じられない。
人間業とは思えない。

僕が凄いと思うのは、この神業とも思える職人技だけでなく、そういったことを求めてしまう、ニッポンジンの美意識である。

「万筋」の良さは、細い縞を支えるために貼られた糸が、かすかに染めむらのように残り、それが型染めの味のなっているのだけど、さすがに、そこまでやる必要があるのか、それが、その労力に見合うほど、ホントに美しいのか、という疑問は残る。

しかし、やってしまうのがニッポンジンなのである。
とことん、望んで、つくるほうも、とことん、やってしまう。

そんなことにこだわっているから、アメリカに負けてしまうんだ、と多くの識者が言っている。

職業柄、色々な時代の、多彩な織物・染物を毎日目にしている。
宮古上布、越後上布、結城紬大島紬加賀友禅、辻が花・・・いったいどれほどの種類の染めや織りものがあるのだろう。
そして、それぞれの織物・染物の最高峰のものには、この万筋をつくる職人たちと同じ、狂気じみたスピリットが込められているのである。
最高の宮古上布を手にしたら、継ぎ目もわからないように績まれた糸、かっちりと織り合わされた青雲のような精緻な絣の模様、砧打ちされた輝き、風の様に軽く、滑らかな手触りに、陶然となる。
そして、この織物が生まれるまでに捧げられた、幾万もの狂気じみたニッポンスピリットに思いをはせることになる。

良くも悪くも、それが、ニッポンジンのやってきたことなのである。

ニッポンは製造技術や既存技術を工夫することについては、一流だけれど、創造性に欠ける、と言う。
だから、日本から、マイクロソフトも、グーグルも、Macも生まれなかったのだと。

でも、ちょっと違うと思うのだ。

日本は、シルクロードのまだ先、世界の辺境も、辺境の、端っこにある小さな国である。
ひらがな、漢字、カタカナと、何種類もの文字を使い、ニッポン語という難解な文法の言葉を使って、小さな小さな国土で寄り添って暮らしている。
そして、この辺境の地の住人は、海外の優れたものへの憧れも強い。
古くは中国から、インドから、そして、ヨーロッパから、アメリカから、まるで、自国のものより海外のもののほうが、いつも優れているかのように、貪欲に吸収してしまう。


マイクロソフトも、グーグルも、Macも、情報革命という、まさに中央の、大通りのどまんなかで生まれた。
アルファベットという能率的な文字を使い、英語というオオテの言葉を使い、世界を支配するものたちが行なっている宴の真ん中で生まれたのである。
それが、日本で起きなかったと嘆いてみたところでせんないことだ。
辺境に住むものには、届かないところで起きていることなのである。



辺境には、辺境の花が咲く。
しかも、このニッポンという辺境の地には、真に創造的な花が咲くのである。

たとえば、玉縞。一竹辻が花。茶道。
たとえば、浮世絵、根付、漫画、ウォークマン、カラオケ、ゴスロリ


これからも、辺境の地、日本から、真に創造的な花が生まれ、世界に広まっていくだろう。
それは、あくまで、ニッポンが、ニッポンという辺境の地にいるからできることなのだ。

たしかに、腐ってしまったかもしれないけど、僕は、この辺境の地、ニッポンが大好きなのだ。

 

(写真は 江戸小紋)