ICHIROYAのブログ

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ぼくの東日本大震災

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お遍路 白衣


震災や原発について何かを書くことは避けてきた。

たくさんのかたが亡くなられ、
たくさんのかたが愛する人をなくし、
たくさんのかたが故郷を失い、
たくさんのかたが日常を失った。

関西に住む僕は、なにも失わなかった。

ひとむかし前の反原発ムーブメントのころから、原発の危険性について、広瀬隆さんの本などを読み、また、度重なる事故と電力会社の隠蔽の顛末について、新聞情報だけれど、注意して追いかけていた。

地震のときは、市場で競りの最中。地震は、東北だったと聞いたとき、まっさきに「原発は大丈夫でしょうかね」とOさんに言った。
原発があのような状態になっていることは、ニュースで知り、少ない情報にいらついて、Twitterで、Ustreamで、ほんとうのところはどうなっているのか、調べた。

大学時代の友人たちと、メールグループで色々なことをやり取りしていた。
あの時点では、原発については、僕がもっとも知識があったようで、どういう事態が起きていて、どうするべきか、関東の友人から聞かれた。
3月15日前後だった。

僕がもし関東にいれば、少なくとも、自分の子供たちは、直ちに西に避難させるべきだ、と思った。
でも、そんなことは言えなかった。
相手は、社会的にも重要な地位にいる立派な同じ年の男たちであり、大きな影響を及ぼしかねない決断に、僕がこうすべき、というようなことは、口が裂けても言えなかった。
自分で判断してもらうしかない。
僕は、各種の情報、原発関連のTwitterアカウント、原子力資料情報室のURL,などをメールグループに投稿した。

すると、ある大手企業で部長職にある友人から、
「煽らないで!」
という投稿があり、そのお叱りの文の後に、計画停電でいかに自分が大変な目にあっているかが書かれていた。

僕は、「すまない」と投稿して、以降、メールグループに原発事故に関することを投稿するのをやめた。


カリフォルニアのお客様からは、一刻も早く日本を脱出して、自分の家に来い。家族も、若いスタッフのみんなも、全員受け入れてあげる、というメールが来る。
知人からは、だれもが知っている有名な元政府の要人が、九州へ向かう新幹線に、マスクをして乗っていたという、確かな情報がはいる。

僕や嫁や、両親は、仕方があるまい。
原発にそれだけの危険があると「知っていた」くせに、何も行動を起こさなかった自分の責任である。
たとえ日本全土が放射能で汚染されても、ここに住んでいくほかない。
が、子供たちに責任はない。

原発がどうなろうと、関西まで致命的な被害が及ぶことは、考えられない。
しかし、東京からみんなが避難を始め、また、放出された放射能を含むチリが西に流れてきたら、関西も修羅場になるかもしれない。

僕は、19日関西国際空港発香港行きの正規チケットを2枚、娘たちのために買った。
いったん香港まで出ることができれば、長女の知人の中国の社長さんところへでも、次女がお世話になったことがあるカリフォルニアのそのお客様のところへでも、行くことができるだろう。


これが、僕の東日本大震災で体験したことだ。

なにも失わなかった。

チケット代金も、直前にキャンセルして、ほとんど返金された。


最近、日本から脱出することが、ひとつのムーブメントになっているらしい。
また、大きな震災と原発事故がおきそうだから、財政破綻がおきそうだから、海外に避難する、ということのようだ。

原子力の専門家、地震学者や経済学者、彼らの言うことほど信じられないものはない。
結局のところ、個人のフツウの感性のほうが、正しい判断をすることが多い。
昨日の日経夕刊のコラムにもあったように、軍事の専門家中の専門家、名だたる元帥たちが、当初、飛行機も、戦車も、おもちゃのようなもので実戦では役に立たないと、切り捨てているのである。

将来、また大きな地震がおきることは間違いない。
が、どこでいつ起きるかについては、専門家の意見はあてにならない。
そのとき、どこかの原発が、大きく揺れたり、津波にあったりすることも、間違いない。
が、そのときに、今回のような大事故になるかどうかについて、専門家の意見はあてにならない。

原発事故直後、これでみなが原発に依存しない社会を築こうとすることは、なによりも確実なことに思えた。
しかし、世の中は、原発容認の方向へ進んでいるように思える。

私たちは間違っていました、と事故直後に出てきて、謝罪した原発の専門家の重鎮たちは、どこにいってしまったのだろうか。
あのときの謝罪が本心なのであれば、いまこそ、出てきて何かを言うべきなのではないだろうか。

そして、目前のパンのために、日本の将来を危機にさらそうとしているすべての大人たち、子供たちの未来を思いやることを忘れた大人たちに、もう一度、じっくり考えて欲しい。

どうせ日本はかわらないと、あきらめて、
いつか崩壊するガラスの館に住み続けるべきなのか、
日本を捨てるべきなのか、
子供や、孫たちに、この素晴らしい国土と文化を残すために、
自分も何かを諦め、
日本を変えていく覚悟をするのか、を。