ICHIROYAのブログ

元気が出る海外の最新トピックや、ウジウジ考えたこととか、たまに着物のこと! 

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嫁が泣いた日


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このブログを読んでくれてるひとに、ママって、凄いイメージだと思うわ、と次女の麦が言うので、嫁が泣いた日のことを書きます!

この仕事を始めたころ。
嫁の了解はもらっていたものの、42才で、19年勤めた百貨店をあてもなく退社。娘たちは中学生と高校生。貯金は、いただいた早期割増の退職金のみ。
あったのは、とことんがんばったら、何を扱うにせよ、絶対自分の家族の分ぐらいは稼げる、という根拠ゼロの自信。

案の定、商売のネタは簡単にはみつからず、半年ぐらいぶらぶら。
で、ひょんなことから、アメリカのオークションサイトEBAYで着物を売れば、とくに難しい仕入技術や仕入れルートがなくても儲かることを発見。
とりあえず、いまはそれで稼ぐしかないと、露天で着物を買い込んでは、写真を撮り、オークションに出品する日々が始まりました。

いまから10年ぐらい前のことですが、よく儲かりました。
そのころは、ヤフオクでの着物販売も勃興期で、とてもよく儲かったようです。
ただ、あんまり簡単に儲かるので、きっとこのままでは、皆が気づいて、すぐに儲からないようになるに違いない。
やっとみつけた食い扶持ですが、不安で不安で仕方がありません。

その年の夏、知人から、長野県の野尻湖に、在留外国人のあつまる避暑地があり、そこで露天が出るのだけど、空きがひとつ出た。
着物を売りに来たら、とお誘いを受けました。
会社を辞めて以来、子供たちにも、嫁にも、旅行のようなこともできずにいたので、夏休みの旅行をかねて、行ってみようか、ということに。

当時の車は、ホンダのCRV。
大きな荷室があるわけでもないのですが、ルーフキャリアの上にビニールケースに入れた着物をパンパンにくくりつけて、家族4人でいざ出発。

野尻湖は、遠かった。
また、目の前に、自分のお客様を迎えるのは、生まれて始めての体験です。
野尻まできて、ほんとうに売れるのか?

でも、現地で水泳場の小屋の一角を販売場所にもらい、着物を広げてみたところ、外国人のかたが、わさわさと買い物に来てくれます。
海パン姿の青年たちは、男羽織を気に入って、裏を表にして海パンの上、素肌にはおってご満悦です。
女性たちも、バスローブにするとか、おみやげに最適、とかきゃあきゃあ言って買ってくださいます。
そうか、店頭販売なら、写真を撮る必要も、受金の方法に悩むことなく、こんなに簡単に売れるんだ、目を見張りました。
売上金は嫁のウエストポーチに入れていくんですが、みるみる重く、分厚くなっていき、嫁もニコニコです。

その露天で、打掛をたくさん売りに来ている方がいました。
どこか、北のほうのかたで、東北らしい方言がとても楽しいおっちゃんです。
が、どうやら、野尻のお客様には、打掛は大きすぎ、高すぎたようで、あまり、売れ行きは芳しくなさそうでした。
残ったら、全部、買ってくれんか? とおっちゃんが言います。
安くしとくし、持って帰られへんねやったら、送っといたるで。

さて、販売会も終わろうと言う頃、嫁に売上金を数えてもらったら、たしか、40万ぐらいになっていました。
ebayで売上金は入ってきてはいましたが、たいていは、クレジット決済などで、まとまった現金を売上金として手にする機会は、初めてのことでした。
会社を辞めて不安だらけの毎日。
はるばる野尻湖まで8時間も運転してやってきて、初めての露天で得たお金。
千円や5千円札、100円硬貨などで、積み上げたずっしりと重い40万円。

「そのカネかせよ」と僕。
「えっ!どうすんのよ」とポーチを握りしめて嫁。
「打掛買うんだよ。あのおっちゃん、残りを全部売ってくれるって言うんだ。40万あったら全部買えるし」

いや! 絶対、いや!

そう、いや、と叫んで、ウエストポーチを握りしめた嫁は、たしかに、泣いていたのでした。


僕は、非情にも、嫁からウエストポーチをむしりとり、そのお金のほとんどを打掛に投じました。
もちろん、投じたお金は、ちゃんと大きくなって帰ってきました。

と、まあ、こんな具合に、強い嫁も、泣くことがあるんです。

*この記事やばいかも!消去されていたら、理由は聞かないでくださいね!