閻魔さまにモノ申す
すべてはDNAのやつのせいである。
神様が、気まぐれに、僕のDNAの塩基配列を決めて、まあ、やってみなはれ、とこの世に送り出す。
野球選手にはなれず、歌手にもなれず、サラリーマンも挫折し、もちろん、作家にもなれず、案の状、あかんやんけ!と言ってみても、神様は、あっそ、ってことである。
しかし、神様は、懲りずに、また、僕の塩基配列と嫁のそれとを混ぜあわせて、やってみなはれ、と娘をふたり世に出す。
そもそも、腹立たしいことに、神様は、親のふたりのDNAをがらがらぽんして、ふたりを超える塩基配列ができると思っているのだろうか。
たとえば、歯である。
母は、かみ合わせが良すぎて、歯の減りが早い、と言われるほど、良い歯の持ち主だが、父は、正咬合プラス、早い話が出っ歯である。
僕も妹も、父の歯を受け継いだ。
嫁の歯並びは綺麗だが、ぼくらの娘たちふたりは、どちらも僕の歯並びを受け継いでしまった。(最近、やっと、ふたりとも、歯列矯正歯科から開放されたばかりです)
つまり、父の歯は、母と嫁の歯並びに関する良いDNAを完全に駆逐してしまった。
ひどいじゃないか!
せめて、半々にしてくれても良いものを。
このままいくと、十数世代あとの人類は、みな、さんまさんみたいな顔になってしまうではないか!
そりゃ、神様の気持ちもわかる。
何十兆も、何百兆も、何千兆も、まったく異なる塩基配列をつくらなきゃならない。
粗製濫造でないと、とっても追いつかない。
でも、それだけつくっていりゃ、なかには、ボールをひっぱたいて、穴に入れるのがとんでもなくうまいDNAとか、あきらかに嘘をついているのに皆を説得してしまうのが得意なDNAとか、天井を見ながら泳ぐのがとてつもなく早いDNAとか、好きなときにいくらでも涙を流せるDNAとか、いろいろできるってもんだ。
まあ、神様がひどいことばかりするのは、周知のことなので、こればかりをせめてみても仕方がない。
いただいたDNAでやってみるしかない。
えっ?
でも、娘ふたりをつくったのは、神様じゃなくって、あんただろって?
あ、そうでした。